エラベノベル堂

あおい、料理大会へ

全年齢

小説ID: cmnhj5wnn001301mzih0zkydh

2章 / 全10

大会の参加条件を読み上げる紙は、あおいの想像よりずっと薄かった。年齢制限の欄に目を落とした瞬間、喉の奥がきゅっと詰まる。中学生は保護者の同意が必要。店の代表にはなれない。たったそれだけの言葉が、商店街の屋台よりも高い壁に見えた。けれど、あおいは紙を握りしめたまま、すぐに顔を上げた。代表になれなくても、挑む方法はあるはずだ。祖母なら、きっとそこで立ち止まらない。あおいは近所の八百屋へ向かい、昼休みの八百屋の夫婦に新しい汁物を差し出した。次に、文房具店の学生たちへ小さな焼き菓子を配り、放課後の帰り道では、商店街の常連に一口ずつ食べてもらった。おいしいかどうかだけを聞いても、返ってくる言葉は意外と曖昧だった。少し甘い、香りはいい、やさしい味だと笑われる。だが、あおいはそのあとに続く表情を見逃さなかった。二口目をためらわずに食べる人は、皿の中に何かを見つけている。黙って湯気を見つめる人は、味より先に安心を受け取っている。試食を重ねるたび、あおいは気づいた。料理は舌だけで終わらない。食べる人がどこで息をつき、どこで目を細めるかまで含めて、ひとつの答えになる。祖母の台所でもそうだった。疲れた顔で帰った父に、祖母は熱々の味噌汁を置き、最初の一口を見てから、静かに椀を寄せた。あおいは自分の皿を見直す。味つけは合っているかでは足りない。目の前の人が、今ほしいものになっているか。そこを確かめることが、勝負の鍵なのだ。夕方、商店街の風がやわらかく吹き抜ける中で、あおいは小さくうなずいた。年齢の壁は、まだ消えていない。それでも、食べる人の反応を読む目があるなら、越えられるかもしれない。

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