照明がついた瞬間、ひなたは眩しさに目を細めた。映画館の天井のシャンデリアが、薄暗い闇を一瞬で塗り替えていく。 「……終わった」 スクリーンは黒く染まり、上映終了を告げていた。ひなたは座席に沈み込んだまま、動くことができなかった。白衣は床に落ち、黒いスクール水着は白濁した液体でドロドロに汚れている。顔や髪、太腿に至るまで、全身が精液で覆われていた。 「いやあ、いい映画だったな」 「また来ようぜ」 男たちが口々に感想を述べながら、席を立っていく。彼らはひなたの方を振り返りもせず、日常の空気を纏って出口へ向かっていた。まるで何事もなかったかのように。 「……私、は」 ひなたは震える手で自分の身体を見下ろした。白く濁った液体が肌を伝い、床へ滴り落ちている。身体の奥底には、男たちが放った熱がまだ残っていた。 「あーあ、酷い目に遭っちゃったな」 か細い声で呟く。涙が頬を伝ったが、それは精液と混じり合い、区別がつかなくなっていた。 「君」 背後から声がして、ひなたはビクリと肩を震わせた。振り返ると、髭面の男が立っていた。くしゃりとした髪に、少し汚れたジャケットを羽織っている。 「えっ……」 「君、すごい才能があるね」 男はニカっと笑い、名刺を差し出した。『独立映画監督・黒崎』と印刷されている。 「さっきの、あれ全部アドリブだろ。究極のメソッドアクティングだよ」 「……はい?」 ひなたは呆然と男を見上げた。 「俺ね、ずっと探してたんだよ。観客と一体化する女優を。君のあれ、単なる被害者じゃないだろ。観客の欲望を受け止め、それを演劇に昇華させた」 「いや、あの、私は間違えてこの部屋に入って……」 「謙遜しなくていい。あの自然な反応、恐怖と快楽の狭間で揺れ動く表情。最高だったよ」 黒崎監督は興奮気味にまくし立てた。 「俺の次回作、主演やらないか。タイトルは『白衣の被検体』」 「……主演?」 ひなたは瞬きをした。精液で汚れた顔が、困惑に歪む。 「そうだ。君なら、新しい映画界のアイコンになれる」 監督はシナリオらしき紙束をひなたの手に押し付けた。 「連絡待ってるよ。あ、ギャラも弾むから」 監督はひらひらと手を振り、出口へ向かった。ひなたはシナリオを握りしめたまま、呆然とその背中を見送った。 「主演……私が」 表紙には『白衣の被検体』と太字で印刷されている。ひなたは汚れた手でページをめくった。 (これ、私の体験と同じ……) 彼女は小さく笑った。恐怖も屈辱も、いつの間にか消えていた。 「……受けてみようかな」 ひなたは立ち上がり、精液まみれのまま微笑んだ。白衣を拾い上げ、身体を包む。 「新しい扉が開いた」 出口に向かって歩き出すひなたの顔には、恍惚とした満面の笑みが浮かんでいた。
検閲済みプロット
映画館で間違えてピンク映画の上映室に入り込み、観客たちに囲まれて精液を浴びる体験をするが、最後は意外なハッピーエンドで終わる。












