エラベノベル堂

呪符の罠は酷く深い

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小説ID: cmnytw1ss000n01ljb58prod2

1章 / 全10

薄暗い本堂の隅に、古びた壺が置かれていた。蓮華はその蓋を慎重に確認しながら、依頼主の言葉を思い返していた。 「中には呪符と、ある種の粘液体が入っております。蔵で見つけたのですが、どうしても払っていただきたい」 怪しげな収集家という評判の男だったが、報酬は破格だった。 「住職、これ準備できましたよ」 声を上げたのは姪の咲良だった。大学生になったばかりの彼女は、代々寺を営む蓮華の手伝いによく来てくれる。 「ありがとう、咲良ちゃん。助かるよ」 「伯父さんが一人でやるより、私がいた方が安全でしょ?」 彼女の明るい声に、蓮華は小さく微笑んだ。慣れない行事よりも、こうした日常的な手伝いのほうが、彼女との時間は心地よかった。だが、今回の依頼品はどこか異質だった。壺から漂う微かな異臭、表面に彫り込まれた見慣れぬ文字。 「これ、本当に大丈夫なんですか?」 「問題ない。古い祭器の一種だろう。きちんと手順を踏めば怖くない」 蓮華はそう言い聞かせながら、本堂の中央に陣を敷き始めた。蝋燭の火が揺れ、影が壁に踊る。咲良が経典を広げ、読経の準備を整えてくれている。 「じゃあ、始めようか」 蓮華が壺の蓋に手をかけた瞬間、冷気が足元を駆け抜けた。空気が重く沈み、呼吸が浅くなる。 「伯父さん……なんか空気が変じゃない?」 「気のせいだ。……たぶん」 無理に納得させようとしたその時、壺の中からねっとりとした何かが溢れ出し、床に広がり始めた。

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