夕方の光が診察室の窓から差し込み、白い壁を琥珀色に染めていた。陽菜は診察台に腰を下ろし、目の前に立つ宗介を見上げる。数日ぶりの来院。あの夜以来、感覚のリンクは消えていなかった。 「膝の曲げ伸ばし、痛みはありますか」 宗介の声はいつも通り平坦だった。冷たい指先が膝に触れ、慎重に動きを確認していく。 「ありません。もう、完全に治ったみたいです」 「そうですか」 彼は短く答え、手を離した。でも、その指先に残る体温の感覚が、陽菜の中に流れ込んでくる。感覚のリンクは健在だ。宗介が触れた場所の余韻、彼の指先に残った自分の肌の感触。それらが入り混じり、胸の奥を熱くする。 「膝の治療は、これで終了です」 その言葉に、陽菜の心臓が早鐘を打った。治療が終わる。つまり、通院の必要がなくなる。感覚のリンクが続いていても、会う理由が消えてしまう。 「先生……」 「ですが」 宗介が言葉を継いだ。彼はカルテに何かを書き込みながら、視線を合わせずに続ける。 「感覚のリンクについては、原因も対処法も不明です。引き続き、観察が必要になります」 「観察、ですか」 「毎週一度、通院してください」 事務的な口調。でも、感覚のリンクを通じて伝わってくるのは、必死に隠そうとする切実な願いだった。彼女を繋ぎ止めたい、この関係を続けたい。その熱が、言葉にならないまま流れ込んでくる。陽菜の胸が一杯になった。 「先生、それって……医学的な理由ですか」 「……いいえ」 宗介は顔を上げた。変化のない表情が初めて崩れ、その奥にある熱が露わになる。そして、彼の唇がわずかに弧を描いた。初めて見せる、微かな笑み。 「あなたに、会いたいからです」 その言葉と笑顔に、陽菜の頬が熱くなった。冷徹な医師の仮面の下に隠されていた、一人の男の素顔。 「……じゃあ、ずっと通います」 「期待しています」 宗介は処方箋用紙に何かを書き、手渡した。受け取って見ると、そこに書かれていたのは薬の名前ではなく、毎週金曜日の日付と時刻だけ。 「次回の予約です」 「はい」 陽菜はその紙を胸に押し当てた。治療という名目は消えた。でも、感覚を共有する秘密の関係は、これからも続いていく。診察室のドアを出ながら、彼女は振り返った。夕陽の中、宗介が静かに見つめている。感覚のリンクが、二人の鼓動を一つにしていた。
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大学陸上部の陽菜は膝の怪我でスポーツ整形医の宗介に通う。無表情な彼だが、誤って長く肌が触れた瞬間から、互いの感覚が同期する現象が発生。彼の痛みや孤独、そして抑圧された欲望までが手に取るように分かり、診察が背徳的な快感へと変わる。ある夜、酔った勢いで互いの身体反応が可視化され、感覚を共有しながらの濃厚な結合に至る。診療室で交錯する五感と本能を描く官能劇。






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