エラベノベル堂

卵かけご飯論争部

全年齢

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10章 / 全10

全校発表の日、体育館の空気はいつもより少し甘かった。演台の前に立った真白は、客席のざわめきの奥で、蒼が緊張のあまり膝を揺らしているのを見つけて、思わず笑いそうになった。校長の許可を得た弁論部は、卵かけご飯はぜいたくかという題を、もう答えを決めるためではなく、みんなで見直すために話すことにしたのだ。 奏は食べ物の背景にある手間を、静かな声でほどいた。悠は、安い高いで切り分けるだけではこぼれてしまう気持ちがあると語り、蒼は朝の一杯が一日を支える感覚を、湯気の立つ茶碗になぞらえた。最後に真白が言った。あの日のニワトリは、ただ迷い込んだのではなかった。私たちに、食べることは誰かを思うことだと教えに来たのかもしれない、と。 その瞬間、体育館の後ろの扉がそっと開いた。養鶏場の女性が立っていた。その腕の中には、白い羽を揺らす小さな影。無事に学校へ戻せないまま、近くまで来ていたという。ざわめきが広がる中、彼女は言った。あの鳥は今、安心できる場所を見つけたと。 けれど、真白たちが見たのは、羽ばたく鳥だけではなかった。鳥の足元に、ひとつの卵が落ちていたのである。誰も拾い上げないまま、白い殻は舞台の光を受けて、静かに輝いた。校長が驚いた顔をする。蒼が息をのむ。悠がぽつりと呟いた。 「結局、ぜいたくって、向こうから返ってくるものなのかもな」 笑いが起こった。緊張で固まっていた空気がほどけ、客席からもつられるように柔らかな笑いが広がる。真白はその音を聞きながら、ようやく理解した。守りたかったのは、卵でも鳥でも、答えでもなかった。日常を大切だと思える心、そのものだったのだ。 発表が終わると、校長は少し困ったように咳払いをしてから、弁論部の活動を正式に継続すると告げた。ただし条件は一つ。次の題目は、学校全体を巻き込んで考えること。体育館は再び笑いに包まれた。 夕方、部室に戻った四人は、机の上に置かれた新しい紙を見る。題は、納豆はぜいたくか。真白は鉛筆を取り、何も言わずに欄外へ丸をひとつ描いた。答えを急がなくてもいい。言葉を交わせる限り、日常はまだ温かい。窓の外で風が揺れ、どこか遠くで、あのニワトリが元気そうに鳴いた気がした。

検閲済みプロット

卵かけご飯がぜいたくかどうかを毎日討論する高校の弁論部が、ある日ひょんなことからニワトリを迎えることになり、部の議論が思わぬ方向へ広がっていくコメディ作品として描いてください。

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