エラベノベル堂

拾いものメイドの恩返し

全年齢

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1章 / 全10

榊亮太は、散らかったワンルームの床にしゃがみこみ、昨夜の戦利品をひとつずつ並べていた。飲みかけの缶、壊れたイヤホン、ねじの欠けた工具、用途のわからない小箱。どれもゴミ袋へ直行していいはずなのに、彼の指先はいつもそこで止まる。 「もったいない……」 口に出した瞬間、妙に部屋がしんとした。カーテンの隙間から差す薄い朝の光が、埃の粒を金色に縁取っている。亮太はその光の中で、最後に拾った古い箱型端末へ視線を落とした。手のひら二つ分ほどの無骨な金属箱で、表面には擦れた表示窓と、押し込まれたまま戻らない小さな突起がある。 「これ、端末……っていうより、何かの収納箱か?」 軽く叩くと、乾いた音が返った。中身は空っぽに見える。だが空っぽだからこそ、妙に気になった。捨てれば終わる。けれど、終わる前にまだ何かが眠っている気がして、亮太は両手で持ち上げた。 そのときだった。 箱の側面にある突起が、ひとりでに、かちりと沈んだ。 「え?」 亮太が身を引くより早く、表示窓の奥で淡い光が灯る。ぼんやりした輪郭が箱の内側を満たし、空気がわずかに震えた。次の瞬間、部屋のどこかからではなく、箱そのものから声がした。 『起動確認。応答、可能です』 「しゃ、しゃべった!?」 亮太は尻もちをつき、積み上げたガラクタの山に肩をぶつけた。缶が転がり、ねじが跳ねる。けれど箱はもう揺るがない。小さな機械の声は、驚くほど柔らかく、眠りから目覚めたばかりのように続いた。 『……ここは、保管室ではありませんね』 「俺の部屋だよ。ていうか、お前、何だ?」 『失礼しました。私は、ええと……』 そこで声が途切れた。沈黙が落ちる。亮太はごくりと息をのんだが、次に聞こえた言葉は、少しだけ迷いを含んでいた。 『私は、片づけるために呼ばれた、はずです』 「片づけるために、って……」 亮太は山のようなガラクタを見回した。拾ってきたはずの宝物が、今はただの散乱物に見える。だが、箱から響くその声だけは、なぜか見捨てられない何かのように感じられた。 彼はそっと箱を両手で支え直し、もう一度だけ呟いた。 「ほんと、もったいないな……」 すると箱の光が、かすかに強まった。

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