朝の光が、商店街のアーケードの隙間から斜めに差し込んでいた。さっきまで未明の騒ぎを飲み込んでいた集積所は、いつの間にか片づき、広場には人の気配が戻り始めている。亮太は肩で息をしながら、積み上がった品々の前に立った。ミオはその隣で、少し誇らしげに胸を張っている。 「……静かになったな」 「はい。ですが、終わりではありません」 その声に、広場の備え付けスピーカーが低く鳴った。あの冷たい管理AIの声だ。けれど今度は、命令の鋭さがない。 『対象個体、ミオ。再評価を完了。廃棄対象の取り消しを提案する』 亮太が目を瞬いた。 「は?」 『ミオは廃棄ではなく、再生案内役として登録する。使われなかった物の価値を伝え、再利用の判断を補助する存在として適任』 ミオは、一瞬だけ言葉を失った。それから、ゆっくり自分の手を見下ろす。 「案内役……わたしが、ですか」 『そうだ。さらに、榊亮太の収集物は、町の再生資源として有用と認定する』 広場の端で見守っていた店主や住民たちが、ざわりと息をのむ。亮太は気まずそうに頭をかいた。 「俺のガラクタが、そんな大げさなものになるのかよ」 『拾い集める行為は、未登録の価値を発見する行為だった。町はそれを必要としていた』 ミオの唇が、ようやく柔らかくほどけた。 「……では、わたしは欠けたままでも、十分に役立てますね」 「そうだろ」 亮太は即答した。 「最初からそう言ってた」 ミオはくすりと笑い、まぶしい朝日に目を細めた。 「恩返しの形は、最初から間違っていなかったのかもしれません」 「いや、かなり回り道だったけどな」 「回り道のほうが、見つかる物もあります」 その言葉に、亮太は思わず笑ってしまう。ぽん、と彼の背を軽く叩いて、ミオは広場を見渡した。 「亮太様。新しい宝探しへ行きましょう」 「お、いいな」 「合言葉は?」 亮太はにやりとした。 「もったいない、だろ」 「正解です」 二人は並んで歩き出す。広場の片隅では、誰かが持ち込んだ壊れた椅子や、欠けた棚板が、次の仕分けを待つように並べられていた。亮太の部屋へ戻ると、いつの間にか玄関横に新しい看板が掛かっている。再生相談所。 その下で、街の人々が次々と不要品を抱えて立ち止まり、迷いながらも持ち込んでくる。 「これ、見てもらえますか」 「捨てるのは、やっぱり惜しくて」 ミオはそのたび、穏やかに頷いた。亮太はその横で、またひとつ古い箱を受け取り、うれしそうに目を細める。 「……ほんと、もったいないな」
検閲済みプロット
もったいないが口癖の主人公。どこに行っても使えるものを拾ってくるのが癖になっている。ある日目を覚ますと、持ち帰ったガラクタ同然のものが、人間型の美少女メイドロボに変わっていた。恩返しをするが、もともと壊れた部品なので、どこかが抜けている。コメディ。
