退職してからというもの、五人は毎日がやけに長かった。朝は早く目が覚め、新聞を読み終えても昼までまだ時間がある。買い物も散歩も一通り済ませれば、残るのは静かな部屋と、誰に向けるでもない元気だけだった。 そんな折、町内会館のホールに、かつて同じ工場や役所、商店街で働いていた顔ぶれが偶然集まった。誰かがぽつりと、最近は空き家も増え、子どもたちの見守りも手薄だとこぼした。すると別の誰かが、だったら自分たちで何かやろうじゃないかと笑った。最初は冗談半分だった。だが、話は妙に弾んだ。 五人にはそれぞれ、長く生きてきたぶんの得意があった。道をよく知る者、声がよく通る者、手先が器用な者、人の顔を覚える者、そして場を和ませることにかけては右に出る者がいた。年寄りの集まりをただの寄り合いで終わらせるより、町を巡って困りごとを拾う役目があるなら面白い。誰かがそう言った瞬間、空気が少し変わった。 次の週、彼らは色とりどりの腕章をつけ、商店街を歩いた。自分たちを地域の守り手に見立て、半ば戦隊ごっこのような気分で名乗りを上げたのだ。赤、青、緑、黄、白。並んでみると照れくさいほど派手で、通りすがりの子どもたちは目を丸くした。最初は笑われるのではと身構えたが、意外にも、買い物袋を抱えた高齢の女性が近寄ってきて、重い荷物を持ってくれたら助かると頼んだ。 たったそれだけで、胸が熱くなった。 ありがとうと言われるだけで、膝の痛みも、朝の寂しさも少し軽くなる。誰かの役に立てるという感覚は、思っていた以上に甘く、そして強かった。五人は顔を見合わせた。まだ何者でもない。けれど今は、ただの暇つぶしではない。町に必要とされるなら、もう一度くらい胸を張って歩ける気がした。夕暮れの商店街を、五つの影が並んで進んでいく。
町を守る五人組
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