「すみません、どなたか……」 外からの声に、五人は顔を見合わせたまま動けなかった。まだ名もないのに、もう呼ばれている。その妙な緊張に、最初に息を吐いたのは野田だった。 「行こうか。呼ばれたら、返事をするのが筋だ」 公民館の外へ出ると、夕方の風が少し冷たかった。庭先に立っていたのは、近所の回覧板を抱えた主婦だった。困ったように眉を下げ、五人の姿を見るなり、さらに目を丸くする。 「あら……ほんとうに、五人もいるのね」 「ほんとうに、とは失礼な」 榊原が言うと、主婦は慌てて頭を下げた。 「いえ、悪い意味じゃなくて。町内会で聞いてはいたけど、まさか本当に集まっているなんて思わなくて」 三浦が咳払いをする。 「本日より、わしらは地域のために動くことになった。何か困りごとでもあるかね」 その言葉に、主婦は少しだけ安心したように息をついた。そして、抱えていた回覧板を差し出す。 「実は、子ども向けの交流イベントがあるでしょう。あれの手伝いを、お願いできないかしら。人手が足りなくて」 「交流イベント?」 早川が目を細める。 「いいじゃないか。最初の仕事にふさわしい」 野田はすでに気合い十分だった。 「だったら、わしらの色もはっきり見せたほうがいいな。覚えてもらうには、印象が大事だ」 その日のうちに、五人はそれぞれの役割を決めることになった。三浦は赤、早川は白、榊原は青、佐伯は緑、そして野田は金色。誰が見ても分かるように、と野田が強く推した色分けだった。 「金色って、まるで王様みたいじゃないか」 佐伯が笑うと、野田は胸を張った。 「華やかさは大事だ。人は光るものに目を向ける」 その言葉どおり、金色の担当は妙に注目を集めた。歩くだけで視線が集まり、名乗る前から 「あの派手な人」 と覚えられる。けれど、その反応は思ったほど温かくなかった。 「なんだか、近づきにくいわね」 イベントの準備に来ていた年配の参加者が、小声でつぶやく。 「派手だけど、何をする人たちなのか分からない」 野田は笑ってみせたが、相手は少し引いてしまった。華やかであるほど親しみやすいはずだと信じていたのに、どうやら逆らしい。 交流イベントの当日、五人は受付の手伝いや案内を任された。ところが、色分けされた姿が目立ちすぎて、子どもたちは遠巻きに見つめるばかりで、誰もすぐには寄ってこない。 「よし、元気よくいくぞ」 野田が両手を広げた瞬間、さらに一歩引かれた。 「……あれ?」 佐伯が小さく笑う。 「普通の戦隊なら、ここで人気が出るんだろうけどね」 三浦は少しだけ目を細め、混み合う会場を見回した。 「わしらは、子どもたちに憧れられるより先に、警戒されているのかもしれん」 その言葉に、場の空気が静かに変わった。華やかさで引きつけるつもりが、かえって距離をつくっている。五人はようやく、普通の戦隊のやり方がそのまま通じるわけではないのだと、はっきり感じ始めていた。
町を守る五人組
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