春が来るころには、五人は町の景色にすっかり溶け込んでいた。商店街を歩けば、子どもが先に手を振り、若い親たちは会釈を返す。久志が声を張れば人が集まり、達夫が道筋を示せば誰も迷わない。昭男の手にかかれば壊れたものは静かに息を吹き返し、和彦が顔を向ければ相手の名前まで自然とこぼれる。美代子は白い腕章を整え、そこに立つだけで場の空気がやわらぐのを、もう不思議とは思わなかった。 かつて白は、どうにも煙たがられた。上品に見える、近寄りがたい、何を考えているかわからない。けれど今では、白がいると安心するという声のほうが多い。派手に前へ出るための色ではない。誰かの不安を受け止め、ほかの四人へそっと渡すための色だと、町の人たちが知ってくれたのだ。 その日、会館の前で小さな子が転びかけた。美代子がすぐに手を差し出すより早く、近くにいた若い母親が反射的に支え、次に久志が冗談を飛ばし、達夫が段差を確かめ、昭男が靴ひもを結び直した。和彦はその子の名前を呼んで笑わせる。五人の動きはもう、指示ではなく呼吸だった。助けることが特別ではなく、暮らしの中に当たり前にある。 見守っていた町内会長が、しみじみと言った。あんたたちは、戦隊というより町の習慣だね。久志が大きく笑い、なら悪くないと答えると、周囲もつられて笑った。美代子は白い札を指でなぞり、ふと空を見上げた。高く掲げる旗より、手元で交わす挨拶のほうが、ずっと遠くへ届くことがある。そんな当たり前のことを、五人はようやく自分の力で証明したのだ。 夕暮れ、会館の窓辺には活動記録が並び、その一番上に新しい手紙が置かれていた。差出人は、以前は白を特に気にしていた若い母親だった。そこには、あの色があるから町へ出ていけるようになった、今では子どもにも胸を張って話せると書かれていた。美代子は手紙を読み終えると、静かに笑った。久志が隣で、やっと認められたなと言う。違う、と達夫が首を振る。もう認められる段階は終わった。ここからは、最初からいたものとして続いていくんだ。 誰かが拍手し、やがてそれが広がった。五人は並んで頭を下げる。華やかな勝利ではない。それでも胸の奥は、じんわりと熱かった。町に必要とされる形を、やっと自分たちで選べたのだから。 夜風の中、白い腕章がやさしく揺れた。もう目立つことに怯える必要はない。これが自分たちの色で、これが自分たちの歩幅だ。五人は顔を見合わせ、同じ方向へ、自然に歩き出した。新しい日常は、すでに始まっていた。
検閲済みプロット
高齢の5人が個性を活かして活躍する、明るい戦隊風コメディ。一般的には華やかな役割が人気になりやすいが、この物語では逆に目立つ役割が周囲に敬遠されてしまい、主人公たちは工夫とチームワークで評価を変えていく。
