催しの会場は、朝から人の波でざわついていた。広場の向こうでは太鼓の音が鳴り、屋台の匂いが風に乗ってくる。五人はその喧騒の端で、最後の確認を終えたところだった。 「これで、いけるか」 三浦が視線を巡らせる。 「いけるさ。いつもどおりにな」 野田は金色の襷を指先で整えたが、以前ほど前へ出ようとはしなかった。 佐伯が微笑む。 「今日は派手さを競う日じゃないものね」 早川がうなずく。 「困っている人が、すぐ手を伸ばせるかどうか。それが大事よ」 榊原は会場の足元を見て、簡易の留め具を確かめる。 「通る人が引っかからなければ、それでいい」 今回の催しは、町の顔が一斉に集まる大きな行事だ。ここでの振る舞いが、そのまま五人の評判になる。だが彼らは、もう知っていた。見せるための動きより、支えるための動きのほうが、人の心に残ることを。 開会の合図とともに、最初の案内で人が戸惑う。どの屋台が先なのか、どこに並ぶのか、少しだけ流れが滞った。その瞬間、三浦が短く指示を飛ばす。 「右へ寄って、順に進んでください。小さい子は前へどうぞ」 早川が迷い顔の親子に近づき、やわらかい声で道を示す。 「こちらよ。慌てなくて大丈夫」 佐伯は列の間に立って、肩がぶつからないように人の流れをほどく。 「少しずつ進めば、ちゃんと見られるから」 榊原は結び目の甘い飾りを手早く締め直し、危なげな場所を消していく。 そして野田は、いつもの大きな声で人を呼んだが、押しつけるようではなかった。 「こっちだ、こっち。困ったら遠慮なく言ってくれ。わしらは、そのためにいる」 その言葉に、張りつめていた空気が少しほどけた。誰かが笑い、誰かがうなずく。派手な見せ場はない。ただ、五人の手が自然につながり、会場の乱れが静かに整っていく。 やがて、足の悪い老人が立ち止まったときも、子どもが飲み物をこぼしたときも、誰かが声を上げる前に五人のうちの一人が動いた。目立つことではなく、気づくこと。競うことではなく、支えること。そこに、彼らの積み重ねが見えた。 催しの主催者が、人混みの向こうから五人を見つけて、深く頭を下げる。 「助かりました。あんたたちがいてくれて、本当によかった」 野田は一瞬だけ目を細め、それから静かに笑った。 「やっと、そう言ってもらえたか」 三浦もまた、短く息を吐く。 「わしらの役目は、派手に勝つことじゃなかったな」 佐伯が柔らかく応じる。 「積み重ねたものは、こういう場で見えるのね」 早川は会場を見回し、少しだけ胸を張った。 「信頼って、騒がしくはないのよ」 榊原がうなずく。 「だが、いちばん強い」 そのとき、広場の中央で起きた小さな混乱も、五人の連携で大事にならずに収まった。誰も大げさには騒がない。けれど、周囲の視線はもう、最初の好奇心ではなかった。 野田の金色も、もう怖がられるだけの色ではない。呼べばすぐ来る、頼れば応えてくれる、その印として見られ始めている。 三浦は会場の空を仰ぎ、ゆっくりと目を細めた。 「これで、ようやく形になる」 野田が肩を鳴らす。 「形どころか、町の役に立ってるじゃないか」 「ええ」 早川が微笑む。 「それが、私たちの最後のアピールね」 五人は並んだまま、ざわめきの中に立っていた。派手な勝負はしない。だが、信頼と連携だけでここまで来た事実が、彼らの存在意義をはっきりと照らしていた。
町を守る五人組
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