エラベノベル堂

町を守る五人組

全年齢

小説ID: cmnhipaa5000d01mz9wdahm82

9章 / 全10

地域最大の催しは、朝から町じゅうを巻き込んでいた。広場には露店が並び、太鼓の音が風に乗り、子どもたちは色紙の旗を追いかけて走り回る。五人にとっては、これが最後の大きなアピールの場だった。だが久志は、派手に目立つより、ここまで積み重ねたものを見せようと言った。達夫も、観客をどこへ流し、どこで立ち止まらせるかが大事だと、地図を広げて頷く。昭男は仮設の台を確かめ、和彦は来場者の顔と名前を手早く覚え、美代子は受付の白い札を静かに整えた。 開会の合図が鳴ると、五人は一斉に動いた。迷子になりそうな子どもを見つければ和彦が先に名を呼び、重い箱が傾けば昭男が支え、会場の端で道が詰まれば達夫がすぐに流れを変える。久志は声を張って人を集めるが、命令ではなく、こちらへどうぞと誘う調子だった。美代子はその中心を歩き、困っている人の視線を受け止めては、必要な相手へそっとつなぐ。誰も大げさな見せ場を作らないのに、広場は不思議なほど滑らかに回っていた。 やがて、催しの目玉である餅まきの準備が始まった。若い実行委員が派手な演出を足そうとして、上に登った飾り台がぐらりと揺れる。ざわりと人波が引いた瞬間、五人は顔を見合わせた。久志が大きな声で下がってくれと叫び、達夫が危ない場所を即座に外へ誘導する。昭男は台の支柱へ駆け寄り、手持ちの器具で押さえ込み、和彦は子どもたちを安心させるように笑顔で手を振った。美代子は倒れかけた若者の肩を支え、落ち着いて、と低く告げる。 その連携は、見ていて胸がすくほど無駄がなかった。大きな音も、派手な決め台詞もいらない。ただ、誰が先に動くかが自然に決まっていた。台は無事に立て直され、観客の不安もすぐに収まった。すると、広場のあちこちから拍手が起こる。最初は助かったからではなく、あれだけの混乱を笑いに変えてしまったからだった。 催しの終わり際、会場の中央に町長が立ち、五人へ感謝状を手渡した。だが本当に人々を驚かせたのは、そのあとだった。表彰台の横に、手作りの旗が掲げられていたのだ。白地に五つの色が重なり、その真ん中に大きく一文字、結と書かれている。説明したのは、以前から白を煙たがっていた若い母親だった。あの色があったから、私たちは安心して近づけた。だから今日は、ひとつにつながる日だと思ったんです。 美代子は旗を見上げたまま、少しだけ目を丸くした。白は浮く色ではなく、みんなを寄せるための場所だった。久志が照れくさそうに笑い、達夫が肩をすくめ、昭男が静かにうなずく。和彦は来場者の拍手を拾うように手を振った。 その夜、掲示板には新しい紙が貼られた。町の守り手は、派手さではなく、信頼でできている。そこに署名はなかった。だが広場の片隅で、白い札だけがやわらかく灯りを受けていた。五人は初めて、自分たちが何者かをはっきり知った。戦隊は目立つためにあるのではない。誰かの不安を、気づかれぬうちに受け止めるためにある。しかも最後に選ばれた答えは、英雄らしい勝利ではなく、町そのものが彼らを守る側に回ったことだった。

9章 / 全10

TOPへ