エラベノベル堂

図書館の心霊写真

全年齢

小説ID: cmnhjqti9001t01mzyazudr6l

10章 / 全10

ぼくは真央と先生にお願いして、放課後の図書館のすみで小さな区切りをつけることにした。古いアルバム、写し取った記録、結衣と弟と兄の名前を書いた紙を一枚ずつ机に並べる。怖さはまだ残っていたけれど、もう逃げるためではなく、きちんと終わらせるために集めたかった。先生は黙ってうなずき、図書館の片隅にある古い掲示板の前へぼくらを案内してくれた。そこは、昔の写真やお知らせが貼られていた場所で、今はほとんど使われていない。 ぼくは深呼吸をして、写真の由来を順番に口にした。藤棚の前で撮る約束。急な出来事で撮れなかった一枚。弟の代わりに兄が持ったカメラ。待つ人と、戻ろうとした人。そのどれもが欠けたまま残っていたから、写真の端に暗がりが宿ったのだと。真央も続けて、これは誰かを驚かせるための怪談じゃなくて、伝える相手を失った記憶だったのだと、はっきり言った。 先生はアルバムのページをそっと閉じ、掲示板の前に白い花を一輪置いた。派手なことはしない。ただ、忘れないための印みたいに。ぼくは結衣たちの名前を書いた紙を花の下にそっと差し込んだ。すると、窓際に落ちていた影が、ゆっくりほどけるように薄くなった。冷たかった空気も、少しだけ軽くなる。背後で小さく鳴っていた紙の音が止まり、図書館はいつもの静けさを取り戻した。 その夜、アルバムを開いてみると、右端の暗がりはもう濃くなかった。校庭の隅には、ただ夕方の光が残っているだけだった。けれど、写真が消えたわけではない。そこには、待ち続けた人たちの時間が、静かに収まっていた。怖いだけだと思っていた一枚が、誰かの記憶をつなぐものだったと知って、ぼくは胸の奥が少し熱くなった。 それからぼくは、心霊写真を見つけるたび、まず怖がる前に考えるようになった。そこに写っているのは何かではなく、誰かかもしれないと。ぼくはまだ、不思議な写真が好きだ。けれど今は、ひやりとする気配の向こうに、残したい思いがあるかもしれないと思える。写真は恐ろしいものだけじゃない。時間と時間をつなぐ、小さな扉なのだ。ぼくはその扉を、前よりずっと静かに開けるようになった。

検閲済みプロット

今の世の中、心霊写真は簡単に作れてしまう。心霊写真が大好きな小学生が、学校の図書館で昔の写真を見つける。デジタル加工のない時代に撮られた、正真正銘の不思議な写真。似たような雰囲気の写真を自分でも再現しようと工夫しているうちに、写真にまつわる怪異に巻き込まれてしまう。

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