「おはようございます、カイト君」 オーナーの声で意識が浮上した。見慣れた天井、いつも通りの薄暗い部屋。けれど何かが違っていた。体の奥底から熱いものが湧き上がるような、奇妙な感覚。昨夜何か特別なことをした記憶はない。それなのに全身の感度が異常に高まっているような、肌が粟立つほどの鋭敏さがある。 「……おはようございます」 返事をしてベッドから起き上がる。指先がシーツに触れただけで、電流のようなものが走った。 昼過ぎに出勤すると、いつもと変わらないカフェの風景が広がっていた。エスプレッソマシンの音、客たちの話し声、香ばしいコーヒーの匂い。日常そのものだ。けれど身体の違和感は消えない。それどころか、来店する女性客一人ひとりの 「弱点」 のようなものが透けて見えるような錯覚に襲われる。 「すみません、ラテでお願いします」 仕事で疲れている様子の女性がカウンターに座った。スーツ姿、おそらく二十代後半。肩が強張り、首筋に力がこもっている。 「かしこまりました」 ラテを作りながら、無意識に彼女の身体の緊張を解く方法が頭に浮かんだ。カップを差し出す際、指先が軽く彼女の手の甲に触れる。ただそれだけのことだった。 「あっ……」 彼女が小さく声を漏らし、頬を染めた。まるで電気ショックでも受けたかのように身体が跳ねる。 「大丈夫ですか?」 「ええ、その……何でもないわ。なんだか急に熱くて」 彼女の瞳が潤み、呼吸が少しだけ乱れた。敏感なポイントを見抜き、意図せず刺激してしまった。そんな確信が腹の底で疼く。 シフト終了後、奇妙な感覚の正体を探るべく帰り道のコンビニへ立ち寄った。深夜のコンビニは蛍光灯が白く眩しい。 「いらっしゃいませ」 レジに立っていた女性店員が顔を上げた。瞬間、視線が絡み合った。彼女の全身から発せられる 「何か」 が、カイトの中にある熱と共鳴した気がした。黒髪のショートヘア、無表情に近い静かな瞳。けれどその奥底で揺らめく熱量は、紛れもなく淫靡な色を帯びていた。
秘めた支配は甘い
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