エラベノベル堂

深夜ラジオの予言

全年齢

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10章 / 全10

送信機が白く弾けた瞬間、地下の空気は一度だけ無音になった。次いで、耳の奥を切り裂くような雑音が奔流となって押し寄せる。キャプテンは制御盤に手を伸ばしたが、もう遅かった。彼が破滅の印だと信じていた予言書の一節は、赤い糸で無理やり縛られた断片にすぎない。そこに書かれていたのは、世界の終わりではなく、終わりを押し付ける者へ向けた警告だったのだ。選ばれし者は災いを起こすのではない。災いを、選び直せる。僕はその意味を、今ようやく知った。 胸の奥で、眠っていた力が熱を増した。怖い。けれど、もう逃げるだけではない。僕は封印具を握りしめ、あふれそうになる流れを押し込めるのではなく、両手で受け止めた。呼吸に合わせて、言葉にできないざわめきをほどいていく。すると、手首の内側で走っていた光がひとつの輪になり、暴れていた感覚が静かに整っていくのが分かった。僕は僕のままで、この力を使える。そう思えた瞬間、視界の端で揺れていた床の軋みが止まり、制御室を覆っていた歪みが少しずつほどけていった。 キャプテンは歯噛みして笑った。 「まだ間に合うと思っているのか」 「間に合わせるんだ」 自分の声が、驚くほどまっすぐだった。雑音の底から聞こえていた放送は、もう僕だけのものではなかった。かつて眠れない誰かへ投げられた声は、今ここで、壊されかけた未来をつなぎ直す合図になっている。 そのとき、妹が封印具の鍵を最後まで回した。重い歯車が低くうなり、地下を巡っていた歪んだ回路が一斉に開放される。止められていた時間が、ひび割れるように現実へ戻っていく。整列していた同級生たちはひとり、またひとりと膝をつき、呆然と周囲を見回した。誰かが名前を呼び、誰かが泣きそうな顔で立ち上がる。町を覆っていた薄い膜が、ようやく破れたのだ。 最後まで抵抗していたキャプテンも、送信機の熱に弾かれるように後ずさった。彼の瞳には、勝者の色はもうなかった。ただ、自分が読んだはずの言葉を読み違えていた男の、空っぽな驚きだけが残っていた。僕はその姿を見て、勝ち負けよりも大事なものがあるのだと知る。壊すために集めた力は、誰かが選び直すために返されるべきだった。 地下を出るころには、空は薄く明るんでいた。朝の匂いが、少しだけやわらかい。義理の妹は無言で僕の隣に並び、肩が触れるほどの距離で歩いた。 「終わったね」 「うん。たぶん、ここから始まる」 彼女は短く笑って、それから何も言わず前を向いた。 学校へ向かう通学路には、昨日までのざらつきが残っていた。それでも、店先の花がきれいだとか、バス停のベンチが少し傾いているとか、そんなくだらない景色がやけに鮮やかに見えた。僕は自分の中の異質な力を、もう異物だとは思わない。夜のラジオにすがっていた僕は、もういない。 受信機は静かだった。だが、耳を澄ますと、確かに次の放送を待つ気配がある。壊れた未来の代わりに、これからは自分で選んだ日常が続いていくのだろう。予言は破滅を告げなかった。誰かに運命を押し付ける声を、聞き直すための扉だった。僕はその扉の前で、初めて本当に息をした。

検閲済みプロット

主人公はいじめられがちな少年で、ラジオ番組をきっかけに自分の中の特別な力に目覚める。部活のキャプテンは裏世界の支配者として世界を混乱に導こうとしており、王家に伝わる予言書と封印具が物語の鍵となる。主人公は時間を止められる同級生たちの不穏な計画に巻き込まれながらも、義理の妹との絆を支えに、自分の変化と運命に立ち向かっていく。

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