エラベノベル堂

時間停止の深淵へ

18+ NSFW

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1章 / 全10

放課後の職員室は、西日が差し込み、空気中の埃がきらきらと舞っていた。今日から四月。新学期である。 「水無月先生、初日の授業はどうだった?」 隣のデスクに座る年配の教師が、お茶を啜りながら尋ねてくる。水無月美咲は、教卓の上の教材を整理しながら、小さく息を吐いた。 「……思ったより、大変でした。生徒たちの視線が、どこか変で」 「まあ、美人だからねえ。若い子たちには刺激が強すぎたんじゃないか」 からかわれているのだと分かっていても、頬が熱くなるのを止められない。二十三歳、新人教師としてのキャリアが今日から始まったばかりなのだ。 窓の外、空が茜色に染まり始めている。ダンジョンの出現予兆である。 美咲は視線を伏せたまま、心の中でカウントダウンを始めた。あと三時間。街の郊外、廃墟となった工業団地に空間の亀裂が生じる。そこから異次元の怪人が現れるのだ。 「すみません、少し早く帰らせていただいても? 引っ越しの荷物が、まだ片付いていなくて」 「ああ、構わないよ。新生活、大変だろうしね」 職員室を出て、アパートへの道を歩く。隣の部屋に住む老人とすれ違った瞬間、背筋に冷たいものが走った。角野喜一郎。七十代の独居老人だ。 「……お嬢さん、今日は気をつけるんじゃ」 「え?」 「夜は、何かと物騒だからな」 意味深な言葉。美咲は慌てて会釈し、自室のドアを閉めた。 アパートの窓から夜が更けるのを待ち、美咲は隠し持っていた変身アイテムを取り出した。青く光る宝石が埋め込まれたブレスレットだ。 「変身」 その言葉と共に、光が全身を包む。布が擦れる音、肌に張り付く感触。光が収まった時、彼女の体は競泳用水着に似た青いコスチュームに包まれていた。胸元と股間の布面積が心もとないうえ、太腿や脇の下が露わになっている。 「……慣れても、恥ずかしい」 頬を染めつつ、美咲は夜の街へ飛び出した。 ダンジョン内部は歪んだ空間が広がっている。触手を持つ怪人が、ねっとりとした液体を滴らせながら襲い掛かってきた。 「はあっ!」 美咲は素早く間合いを詰め、怪人の胴体に蹴りを見舞った。水着姿で戦うことへの羞恥心を押し殺し、彼女は敵を圧倒する。だが、戦いの最中に奇妙な感覚が走った。 誰かに見られている。 アパートの窓から、角野老人がじっとこちらを見つめているような気がしてならなかった。

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