ミナは冷たいコンクリートの床に膝をついたまま、震える両手で顔を覆っていた。閉ざされたエレベーターの薄暗い空間には、換気扇から絞り出される微かな音だけが響いている。 「……どうして、私ばかり」 大学2年生の春。キャンパス内での陰湿ないじめは、ここ数ヶ月でさらにエスカレートしていた。教科書に落書きされるのは日常茶飯事、履修登録のメールを勝手に削除されたこともあった。そして今日、女子トイレでの呼び出しは罠だった。3人の女子学生に取り囲まれ、この古いエレベーターへ無理やり押し込まれたのだ。 「ねえ、出してよ。お願いだから」 ドアの外から聞こえるのは、くすくすという忍び笑いだけ。彼女たちの足音が遠ざかっていく気配に、ミナは力なくドアを叩いた。 「冗談じゃないわよ……誰か、誰かいないの」 絶望が胸を締め付ける。古びたエレベーターは照明も点滅し、いつ故障してもおかしくない代物だ。スマートフォンの電波は圏外を示している。 その時、不意に天井の隙間から何かがふわりと落ちてきた。黒い布の塊がミナの足元に広がる。 「これ、何」 手に取った瞬間、電流のような痺れが指先から腕へと走った。それは見たこともないほど精巧な作りのゴスロリ衣装だった。黒いレースと深紅のリボン、細部まで施された刺繍が薄暗がりの中で妖しく輝いている。まるで自分に着ろと囁いているような、奇妙な引力を感じる。 「……着るわけないでしょ。こんなの」 拒絶しようとしたのに、体は勝手に動いていた。ブラウスのボタンを外し、スカートを脱ぎ捨てる。滑らかな布が肌に触れた瞬間、ミナの背筋に甘い戦慄が走り抜けた。 「あっ……何、これ」 衣装はまるで最初から彼女のために作られていたかのように吸い付くようにフィットした。同時に、熱が下腹部から全身へと爆発的に広がっていく。 「熱い……体が、変」 強烈な快感の波に襲われ、ミナは壁に背を預けてずるずると崩れ落ちた。秘められた場所が疼き、潤み、甘い吐息が唇から漏れる。今まで一度も感じたことのない感覚だった。 「んっ、ああっ」 その時、エレベーターのドアが唐突に開いた。立っていたのは見知らぬ長身の男だった。 「見つけたよ、ミナ。君の中に眠る才能をね」
覚醒
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