エラベノベル堂

快楽に身を委ねる

18+ NSFW

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1章 / 全10

「みなさん、教科書の五十二ページを開いてください」 チャイムが鳴り響いた瞬間、私の体に訪れるあの変化。熱が下腹部から湧き上がり、全身の肌が艶めかしく輝き始める。私は机に突っ伏しながら、必死に呼吸を整えた。 まただ。今日も授業が始まってしまった。 「おい、大丈夫か? 顔が赤いぞ」 隣の席の佐藤くんが心配そうに覗き込んでくる。私は曖昧に微笑むことしかできない。だって今の私、間違いなく彼を発情させているはずだから。サキュバス化した私の体からは、男性を魅了するフェロモンが無意識に放出されている。 「うん、ちょっと暑くて。大丈夫」 嘘だ。全然大丈夫じゃない。授業が終わるまでのこの五十分間、私は理性の縁で必死に耐え続けなければならない。サキュバスとして本能が騒ぎ立てるのだ。 「男を求めろ」 「精気を吸い取れ」 と。 私は誰にも言えない秘密を抱えていた。三ヶ月前、古びた古本屋で手に入れた魔導書の写本を制作した瞬間にかかった呪い。授業中だけ美しいサキュバスの姿へと強制変身するのだ。地味な女子大学生兼同人作家である普段の私から、豊満で妖艶な魔界の淫魔へ。胸は張り詰め、腰は括れ、唇は誘うように潤む。 「ねえ、放課後どうする?」 「ごめん、今日も原稿があって……」 私は嘘をついた。放課後の約束なんて怖い。サキュバス化が解けた後も、残る性的な余韻が私をどうさせるかわからない。帰宅して冷たいシャワーを浴び、大人のおもちゃで自分を慰める。それが最近の日課だ。 授業が終わると同時に変化は消える。私は逃げるように教室を出て、いつものコンビニへ向かった。深夜まで営業している小さな店。サキュバス化の疲れを癒やすため、おにぎりと緑茶を買うだけの日課。 「いらっしゃいませ」 レジ打ちをするのは、いつもの無表情な店員だ。三十代半ばくらいの男の人。眼鏡をかけ、清潔感のある服装。特に会話もなく、商品をスキャンする音だけが響く。 「……百六十円になります」 会計を済ませようとした瞬間、彼が顔を上げた。眼鏡の奥の瞳が妖しく光る。 「君、素質があるね」 「え?」 「私たちの教団へようこそ。今日のおかずが決まったよ」 彼が微笑んだ。いや、それは微笑みではなかった。獲物を見定める捕食者の目だ。 「おっと、ここじゃ目立つ。後で迎えに行くから」 私は恐怖に震えながら、お釣りを受け取ることも忘れて店を後にした。背後から視線が突き刺さる。 一体何だったのだろう。あの店員、ただのコンビニ店員じゃなかったのか。 私は知らなかった。私の日常が、今夜を境に崩れ去っていくことを。

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