エラベノベル堂

寝台列車、血の刻印

18+ NSFW

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1章 / 全10

「あっ、ちょっと待って……!」 美香が悲鳴を上げた時には、もう遅かった。寝台列車のコンパートメントに足を踏み入れた瞬間、お気に入りのタイトスカートが自動ドアの隙間にガッチリと挟まってしまったのだ。 「うそ、どうしてこんなことに……」 引っ張ってもびくともしない。焦れば焦るほど、生地がきつく食い込んでいく気がする。美香はふうわりとした亜麻色の髪をかき上げながら、深いため息をついた。二十三歳になったばかりの彼女は、愛らしい顔立ちと華奢な肢体の持ち主だが、こと不運に関しては並外れた才能を持っていた。今日も出発前から転倒し、コーヒーをこぼし、今度はこれである。 「お嬢さん、手伝いましょうか」 背後から突然声をかけられ、美香は肩を震わせた。振り返ると、禿頭に白髭の老人がニコニコと立っている。皺の深い顔には一見温厚そうな笑みを浮かべているが、その眼差しはどこか粘着質で、美香の曲線を舐めるように眺めていた。 「あ、いえ、大丈夫です。ありがとうございます」 美香は慌てて断ったが、老人は構わずドアのボタンを操作し、スカートを解放してくれた。よろめいた彼女の腰を支える手が、長い時間、腰の曲線をなぞる。 「私は健太郎。隣の個室だよ。……美香さん、でしたね」 「名前を……?」 「あなたは私のご先祖様だ」 老人が囁いた言葉の意味を問い返す暇もなく、通路の向こうから二人のサラリーマン風の男たちが近づいてきた。揃いの濃紺スーツに、無機質な眼鏡。彼らは美香の姿を認めると、まるで獲物を見つけた肉食獣のように目を細めた。 「君が今回の対象者だね」 「えっ、何の話ですか?」 男の一人が懐から銀色のペンライトを取り出した。先端で青白い光が明滅する。 「リラックスして……深呼吸を」 視界の端で、健太郎が満足げに頷くのが見えた気がした。美香の意識が、じわりと白濁し始めていた。

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