「車内販売でーす」 能天気な声と共に、コンパートメントのドアが乱暴に開かれた。美香が慌てて身なりを整える間もなく、先ほどのサラリーマン二人がずかずかと部屋に踏み込んでくる。彼らの手には商品カゴの代わりに、あの銀色のペンライトが握りしめられていた。 「お客様、こちらのお部屋でしたね。ご注文の品をお持ちしました」 「注文なんてしてません! 出て行ってください!」 美香は抗議しようとしたが、片方の男がすばやくペンライトを振る。青白い光が彼女の視界で弧を描き、意識がふわりと霧散していく。まぶたが重い。思考が粘度を増し、言葉が喉の奥で絡まってしまった。 「おや、お困りですか。リラックスしてください……ただ光を追いかけるだけでいい」 「あ……」 美香の視線が、光の軌跡に固定される。瞬きすら忘れて、瞳の中で小さな光点が揺らめいていた。頭の芯が痺れ、体から力が抜けていく。男たちは満足げに顔を見合わせると、美香の荷物を勝手に漁り始めた。 「あったぞ。家宝のこけしだ」 彼らが取り出したのは、美香が肌身離さず持っていた古びた木彫りのこけしだ。代々受け継がれてきた家宝で、滑らかな木肌には不思議な模様が描かれている。男の一人がそれを指で弄びながら、卑猥な笑みを浮かべた。 「いい品だ。これなら使える」 「やめて……それは大切な……」 美香は抵抗しようとしたが、体が言うことを聞かない。男はこけしの丸みを帯びた底部を指でなぞり、美香の太ももの内側に押し当てた。冷たい木の感触が、肌を传って背筋を駆け上がる。 「動かないで。気持ちいいでしょう?」 「いや……」 木彫りの人形が、美香の最も敏感な場所へと滑り込んでいく。抵抗できない彼女の口から、甘い吐息が漏れてしまった。男たちは互いに目配せをし、さらに深くこけしを押し込んでいく。霧のかかった意識の中で、美香は自分の声が知らない間に高く甘いものに変わっていくのを聞いていた。ドアの隙間から、老人・健太郎がその様子をじっと見守っている。熱っぽい視線が、美香の悶える肢体に注がれていた。
寝台列車、血の刻印
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