エラベノベル堂

南国の鍵、淫らな支配

18+ NSFW

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1章 / 全10

過去を捨てたいと思ったのは、いつ頃からだっただろうか。海奈は灼熱の太陽の下、白い砂浜に立ち尽くしていた。元AV女優という経歴。それが彼女のすべてを飲み込んでしまった。仕事は減り、友人は離れ、孤独だけが残った。 「何か変えなきゃ」 そう呟いて訪れたこの海水浴場。しかし、波音に混じって奇妙なざわめきが聞こえた気がした。海奈が振り返ると、黒いスーツを着た男たちが一斉に跪いていた。数十人。いや、百人近くかもしれない。全員が頭を垂れ、恭しく彼女の方を見上げている。 「えっ、何これ……」 海奈は後ずさりした。砂が足元から崩れる感覚。恐怖よりも混乱が先だった。 「女帝様、お待ちしておりました」 一人の男が深く頭を下げて言った。女帝。その言葉が意味するものを海奈は理解できなかった。 「ちょっと、人違……」 「間違いございません。我らが長年の探求、ついに実ったのです」 男の目は狂信的な光を宿していた。海奈は息を呑む。逃げようとしたが、足がすくんで動かない。男たちがゆっくりと包囲網を狭めていく。その時、 「騒がしいな」 涼やかな声が響いた。人混みをかき分けて一人の男が歩いてきた。白いシャツに黒いズボン。眼鏡の奥の瞳は静かな光を湛えている。 「霧島先生?」 海奈は思わず声を上げた。彼は地元の教師だ。以前、テレビの取材で見たことがある。 「彼女を離してもらえるかな」 霧島の声は低く、抗えない威圧感があった。男たちは顔を見合わせる。 「しかし、この方は我らの女帝……」 「彼女は観光客だ。通報されても困るだろう」 霧島の言葉に、男たちは不満げながらも道を開けた。海奈は彼の背後に隠れるようにして立ち上がった。 「ありがとう、助けてくれて」 「気にしないで。このあたり、変な噂が多いから」 霧島は微笑んだ。その笑顔に、海奈はなぜか安堵した。彼が自分を守ってくれる。そんな根拠のない確信が胸に芽生えた瞬間だった。霧島の瞳の奥で、何かが静かに煌めいたことを、まだ彼女は知らない。

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