エラベノベル堂

凍れる刻の玩具として

18+ NSFW

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1章 / 全10

「いらっしゃいませ」 凛とした声がカフェに響く。エプロンを腰に巻いた桐島蓮は、慣れた手つきでエスプレッソマシーンを操作していた。昼下がりの店内は穏やかなピアノの音色に包まれ、降り注ぐ陽光がマホガニーのテーブルを温かく照らしている。 「蓮ちゃん、こっちの注文お願い」 「はい、ただいま」 同僚の女性スタッフに微笑みを返し、注文を受けた彼女は窓際の席へ向かう。栗色の髪を清潔にまとめ、大きな瞳は知的な光を宿している。スレンダーな肢体は制服のベージュのワンピースに包まれ、控えめながらも女性らしい曲線を描いていた。 お客様への応対を終えた蓮は、ふと窓の外へ視線を向けた。穏やかな午後の日差し、行き交う人々の笑顔。誰も知る由もない。この気弱そうなカフェ店員が、夜になれば裏社会の頂点に君臨する存在であることを。 「お疲れ様、蓮」 「あ、店長。お疲れ様です」 シフトを終えた彼女は更衣室で私服に着替え、自宅へと向かった。都心から電車で三十分、閑静な住宅街に建つ古びた一軒家が彼女の住まいだ。代々受け継がれてきたこの屋敷には、先祖伝来の家宝が数多く眠っている。 「今日は整理でもしようかな」 書斎に入った蓮は、埃を被った蔵の扉を開けた。古書や骨董品が雑多に積まれている。その奥で、不思議な物体が彼女の目を引いた。 「何これ……こけし?」 手に取ったそれは、通常のこけしとは異質だった。ひときわ大きく、漆黒に塗られた胴体には不可解な文様が刻まれている。簡素な顔の筆致は歪で、どう見ても不気味だ。 「こんなものが家にあったなんて」 不思議と目が離せない。その横で古びたアルバムが落ちていることに気づいた。手に取って開くと、昭和初期と思しき写真が並んでいる。 「……え?」 一枚の古い写真に視線が釘付けになった。着物を纏った人々の中に、一際異質な存在が写り込んでいる。影のような漆黒の輪郭、二つの光る瞳。それは人間とは思えない異形の帝王のような存在だった。 その瞬間、背筋に冷たいものが走る。写真の中の 「それ」 と目が合った気がした。 『見つけたぞ……勇者よ』 脳内に直接響いたような声。蓮は思わず写真を取り落とした。 「何……今の」

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