「未来から救いに来た、ですって?」 私は鼻で笑った。この男は高校時代からこうだ。いつも何か大げさなことを言っては、周囲の注目を浴びたがっていた。 「信じなくてもいいけどね。ただ、君の不幸体質の根本原因が分かっているのは僕だけだよ」 「……何の話?」 「ついておいで。この近くに、君の運命を変えるものがある」 草薙は踵を返し、砂浜の脇にある古びた商店街の方へ歩き出した。私は追いかけようとして、自分が生足であることに気づいた。波にさらわれたサンダルは、もう海の中だ。 「待って、靴がないの」 「君らしいね。ほら」 草薙が差し出したのは、彼自身のローファーだった。素足で砂の上を歩く私を見かねて靴を貸してくれるその優しさが、逆に不気味だった。 商店街の奥まった場所に、錆びたシャッターを下ろした店があった。 「ジャンク・パラダイス」 という薄汚れた看板が傾いて掛かっている。 「ここは廃業したんだけどね、僕が特別に借り受けたんだ」 草薙がシャッターを引き上げると、埃っぽい空気が流れ出した。店内には壊れた電化製品や、正体不明の機械部品が山積みになっている。 「君に見せたかったのは、これだ」 彼が指差したカウンターの上に、先ほどのノートパソコンと共に、黒い革の拘束具が置かれていた。手首や足首を固定するためのベルトと、太い鎖がついている。 「……何これ。まさか」 「そのまさかだよ。僕は未来から来た。そして君を救うために、これらを使って実験をする」 「正気なの? 警察を呼ぶわよ」 「呼んでもいいけど、君の不幸は終わらない。それに、僕が言っているのは本当のことだ」 草薙はノートパソコンを開き、電源を入れた。画面に不気味な緑色の波形が走る。 「催眠誘導プログラム、通称オルタ。これが君の過去に刻まれた因果を書き換える」 「催眠……? 何を言っているのか分からない」 「君は告白して振られた男たちのことを覚えているかい? 三人いたはずだ」 私は息を呑んだ。高校時代、大学時代、そして社会人になってから。三人の男性に告白し、三人ともに断られた。その屈辱と悲しみは今でも胸の奥に澱んでいる。 「彼らを呼び寄せることができる。そして君の体に溜め込んだ負の感情を、精液という形で洗い流す」 「なっ……!」 「君は不幸体質の根本原因、つまり過去の男たちが君に向けた欲望と悪意を、自分の中に取り込んでしまったんだ。それを排出し、新たな因果を上書きする。それが救済だ」 草薙の瞳が怪しく光った気がした。 「さあ、アオイさん。実験を始めようか」
救世主という名の嘘に
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