エラベノベル堂

廃墟の記憶

18+ NSFW

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1章 / 全10

「佐藤先生、また靴紐がほどけてますよ」 生徒に指摘されて顔を上げると、ちょうど背後を通りかかった男性教師の足に手が触れてしまった。 「あっ、すみません!」 慌てて立ち上がろうとした瞬間、バランスを崩して胸が彼の腕に押しつけられる。 「わっ、大丈夫ですか?」 美咲は顔を真っ赤にして謝り続けた。新人女教師として配属されてから一ヶ月、毎日がこんな調子だった。満員電車では後ろから押しつぶされ、階段では足を滑らせてスカートがめくれ、給湯室では何故か濡れた床で転んで湿ったブラウスが体に張りつく。全て偶然のはずなのに、どれもこれも艶めいた事態ばかり。 「本当に私、不幸体質なのかも」 放課後、美咲はぼやきながら駅前の商店街を歩いていた。ふと視線を止めたのは、薄暗い路地にひっそりと佇む骨董屋の看板。 「こんなところにお店が?」 好奇心に惹かれて扉を開く。カウベルの音が響く店内は、古書や置物で溢れていた。 「いらっしゃいませ」 奥から現れた老店主は、慈愛に満ちた目で美咲を見つめた。 「おや、奇遇じゃのう」 「え?」 「お前さんを待っておったよ」 彼が差し出したのは、黄色く変色した古地図だった。 「これは廃墟の地図。そこへ行けば、運命が変わるかもしれん」 美咲は理由もわからぬまま、その地図を購入した。帰り道、彼女は地図の隅に記された赤い印を指でなぞった。何故か胸がざわめく。この週末、廃墟へ行ってみようと決めた瞬間、風がスカートを捲り上げ、通行人の視線が太腿に集まった。 「きゃっ!」 美咲は慌ててスカートを押さえた。やっぱり不幸体質だ。でも、古地図の不思議な誘惑が、心の奥で脈打っていた。

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