土曜の朝、美咲は古地図をカバンに忍ばせて家を出た。薄手のブラウスにスカートという軽装だ。目的地は山間部にひっそりと佇む廃墟で、最寄り駅からバスで三十分、さらに山道を歩く必要があった。 「うーん、思ったより遠いかも」 額の汗を拭いながら石段を登る。人気のない場所で、鳥の声だけが響いていた。やがて古びた洋館が姿を現す。蔦が外壁を覆い、窓ガラスは殆ど割れている。美咲は胸を高鳴らせながら正門へ向かった。その時だった。 「きゃっ!」 突出した石につまずき、体が宙を舞う。地面に倒れ込む衝撃と共に、布が裂ける音が響いた。 「嘘……」 恐る恐る体を起こすと、ブラウスのボタンが弾け飛び、胸元が大きく開いていた。しかもスカートの裾が破れて、太腿が露わになっている。 「最悪だわ……」 下着がほとんど見えそうな状態で、美咲は必死に服を整えた。幸い、誰も見ていないようだ。恥ずかしさを押し殺し、意を決して廃墟の中へ足を踏み入れる。埃っぽい空気が漂い、床板が軋む音が響く。 「暗いなぁ。懐中電灯持ってくればよかった」 スマホの明かりを頼りに廊下を進む。壁には古びた肖像画が掛かり、まるで見つめられているような錯覚に陥る。ふと、奥の部屋から微かな音が聞こえた気がした。 「誰かいるの?」 美咲が声をかけると、影から人影が現れた。背の高い青年。整った顔立ちに、どこか懐かしい雰囲気を纏っている。 「久しぶりだね、美咲」 その声に心臓が跳ねた。 「えっ、どうして私の名前を……?」 青年は柔らかく微笑んだ。 「忘れているのも無理はない。でも、僕のこと、覚えてないかな。幼馴染の恭介だよ」 記憶の奥底に眠っていた名前。幼い頃、引っ越す前に一緒に遊んだ少年。 「恭介くん? 本当に?」 「そう。十五年会っていなかったけど、やっと会えた」 彼はゆっくりと近づいてくる。美咲は胸の奥が熱くなるのを感じた。
廃墟の記憶
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