翌日、玲奈は大学の近くにある喫茶店『黄昏時計』の扉を押し開けた。いつものように店内は静かで、古びた時計の針が時を刻む音だけが響いている。 「いらっしゃい、玲奈ちゃん。今日もブレンドでいいかい」 カウンターの中で爽やかな笑顔を見せるのは、マスターの暁人。二十代後半と思われる彼は、いつも穏やかな雰囲気を纏っていた。玲奈はお気に入りの窓際の席に座り、頷く。 「お願いします……あ、ブラックで」 彼女の声は掠れていた。昨晩から続く奇妙な感覚。体の奥が熱くて、何度も悪夢にうなされた。暁人がコーヒーを淹れる手を止め、まっすぐに彼女を見つめてくる。 「玲奈ちゃん、顔色が悪いよ。大丈夫かい」 「大丈夫です、ちょっと寝不足で」 玲奈は視線を逸らした。あの日記のことが頭から離れない。今日の日付の次のページには、何も書かれていなかった。だが、最後のページには『救世主が君を待っている』という文字が。暁人がカップをテーブルに置いた。だが、いつものようには去らない。 「玲奈ちゃん、実は君に話があるんだ。こっちに来てくれるかい」 彼は奥のボックス席へと促した。玲奈は戸惑いながらも従う。 「昨日、何かあったんだろう」 暁人の瞳が、真剣な光を帯びる。 「君の体、何か変化があるはずだ。熱さを感じる。予感がする」 玲奈は息を呑んだ。 「どうしてそれを」 「僕は、崩壊した未来から来た。救世主としてね」 重い沈黙が落ちる。暁人は静かに語り始めた。未来では異形が人類を脅かし、人間たちは絶滅の危機に瀕していた。彼はその未来を変えるために、過去へ送り込まれたのだという。 「君は予言者になる。そして、僕と一緒に世界を救うんだ」 「嘘です……こんなの」 玲奈は立ち上がった。足が震えている。 「冗談じゃありません、帰ります」 マスターの告白を信じられず、彼女は店を飛び出した。夜、玲奈は狭いアパートのベッドで身をよじっていた。体が熱い。肌が疼く。下着が濡れて不快だ。 「何なのこれ……」 恐怖とともに、体の奥底で何かが目覚めようとしていた。
異形の実験体に飼われる
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