エラベノベル堂

触手に溺れる学園の日常

18+ NSFW

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1章 / 全10

桜の花びらが舞う通学路を、真央はいつものように歩いていた。制服のスカートが春風に揺れ、通学カバンを握る指先は少し冷たい。 「今日もいい天気だな……」 何気なく空を見上げた、その瞬間だった。鋭い痛みが後頭部を貫き、視界が白く染まる。 「っ……なに、これ……?」 頭を押さえてその場にしゃがみ込む。通行人の視線が気になったが、痛みは引くどころか増していく。記憶の糸が一本ずつほどけていくような、恐ろしい感覚。名前は……真央。高校二年生。それだけは分かる。でも、それ以外が曖昧だ。家はどこ? 友達は? 昨日何をした? 「思い出せない……」 震える声で呟く。不意に、足元で何かが動く気配がした。視線を下ろすと、そこにいたのは――飼っていたはずの小さな生き物。名前が思い出せない。でも、この生き物が自分のそばにいるのは、当たり前のことのような気がした。奇妙だったのは、その瞳だった。黒曜石のような瞳が、不気味な光を放っている。まるで、真央の中身を覗き込んでいるかのように。 「……あなたは、なに?」 問いかけても、生き物は答えない。ただ、じっと見つめてくるだけだ。不安が胸を満たす。真央は無意識に制服の胸元を締め直した。家に戻らなきゃ。そう本能が告げている。立ち上がり、来た道を戻ろうとする。 「待て」 耳元で、誰かの声がした。驚いて振り返るが、誰もいない。 「こっちだ」 声は、足元の生き物から聞こえたはずだ。でも、そんなはずがない。この生き物は、言葉を話せない。 「……え?」 戸惑う真央の前で、生き物がゆっくりと歩き出す。通学路とは違う方向へ。 「ついてこい」 その声は、甘く、そして命令的だった。真央の足が、意思に反して動き出す。 「ちょっと、待って……!」 呼び止める間もなく、景色が歪み始める。通学路のアスファルトが波打ち、周囲の風景が溶けていく。 「ここは……?」 気がつくと、真央は見たこともない空間に立っていた。薄暗い霧が立ち込め、足元の地面は不気味に発光している。生き物は、真央を見上げていた。その瞳が、狡猾に光った気がした。

1章 / 全10

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