エラベノベル堂

古寺の異形へ

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1章 / 全10

蝉時雨が降り注ぐ真夏の日差しの中、ひなたは古びた石段を一段ずつ登っていた。今年の夏休みは、祖父母の家ではなく、叔父が住職を務める山寺に滞在することになったのだ。 「おお、ひなたちゃん。よく来たねえ」 境内で待っていたのは、柔和な顔立ちの中年男性、叔父の住職だった。 「叔父さん、お久しぶりです」 「六年ぶりか。すっかり大人っぽくなったねえ。背丈も伸びたし、体つきもずいぶん女性らしくなった」 「もう十九歳ですから……」 叔父の視線が一瞬、ひなたの胸元を掠めた気がした。白いブラウスの下で、汗ばんだ肌が張り付いている。 「実はひなたちゃんに、夏休みの間手伝ってほしいことがあるんだ」 「手伝い、ですか?」 「この寺はちょっと特殊でね。各地から集められた呪物の管理をしている」 「呪物……?」 「祟りや呪いのある品々だよ。古い刀や鏡、人形、巻物……そういうのを預かって封印している」 案内されたのは本堂の裏手にある古びた蔵だった。叔父が重い引き戸を開けると、ひんやりとした冷気が漂ってくる。夏の暑さの中、肌が粟立った。 「うわあ……」 棚には奇妙な品々が並んでいた。錆びた刀、割れた鏡、目の描かれた人形、文字の読めない古い巻物……どれもが異様な気配を放っている。 「これ全部、呪物なんですか?」 「そうだよ。若い女性の穢れのない気配が、呪物を鎮めるのに良いとされてね。特に清らかな娘の気配は効果的なんだ」 ひなたはふと、棚の奥で何かが微かに光った気がした。 「ひなたちゃん、一つだけ約束してほしい。夜は絶対にこの蔵に近づかないこと」 「はい……でも、なぜですか?」 「夜は陰の気が強まる。呪物が……活性化する時間なんだよ」 ひなたは背筋に寒気を感じた。だが彼女はまだ知らない。この夏が、彼女の運命を、そして体を、決定的に変えることになるなどとは。

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