エラベノベル堂

妖蟲が乙女を貪る

18+ NSFW

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1章 / 全10

蝉の声が響き渡る八月の真昼、田舎の駅前で美咲は一つ大きなため息をついた。 「遠いなぁ……叔父さんの寺」 セーラー服の襟元を手で仰ぎながら、彼女はバス停の時刻表を確認する。次のバスは一時間後。美咲は肩にかけた旅行バッグのストラップを握り直し、日差しを避けて小さな木陰に移動した。夏休みを利用して親戚の寺の手伝いに来たのは、親からの提案だった。受験生ということもあり、環境を変えて勉強に集中したいという美咲自身の希望もあった。都会の喧騒から離れ、静かな環境で過ごせる――そう思っていたのだが。バスに揺られること三十分、緑に囲まれた山道を抜けると、古びた山門が見えてきた。 「ここが叔父さんの寺か……」 石段を登りきると、住職である叔父の宗次が縁側で待っていた。 「よう来たな、美咲。久しぶりやな」 「叔父さん、お久しぶりです」 「まあ、中に入りや。冷たいものでも飲んで休みなさい」 通された客間でお茶を飲みながら、美咲は寺の周りの静けさを感じていた。都会とは全く違う空気。鳥のさえずりと風が木の葉を揺らす音だけが聞こえる。 「それで、手伝いって何をすればいいの?」 宗次は困ったように頭をかいた。 「実はな、蔵の中にある呪物の整理を頼みたいんや。最近、体がきつくなってな。美咲は几帳面やから、ちゃんと整理してくれると思うんや」 「呪物?」 「まあ、古い巻物とかお札とか、そういうもんや。怖がらんでええ。ただの古いもんを整理するだけやから」 美咲は少し不安を感じたが、頷いた。 「わかった。やってみるよ」 翌朝、美咲は蔵の前に立っていた。鍵を開け、重たい引き戸を開けると、独特の匂いが漂ってきた。古い紙と木の匂い。埃が舞う中、美咲はマスクをつけて中に入った。 「うわ、結構あるな……」 棚には古びた巻物や木箱、怪しげな壺が所狭しと並んでいる。美咲はノートとペンを用意し、一つずつ確認しながら記録を始めた。 「……『封魔の巻』? なにこれ」 古びた巻物には、そんな名前が記されていた。美咲は首を傾げながら、それを脇に置いて次の箱に手を伸ばす。 「『退魔符』……『鎮魂の壺』……どれも変な名前」 一つ一つ確認していくうちに、美咲は何か違和感を覚え始めた。これらは普通の古文書ではない。どこか禍々しい気配を感じるのだ。 「叔父さん、これ本当にただの古いものなんですか?」 問いかけても、蔵には美咲一人。静寂だけが答えた。

1章 / 全10

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