エラベノベル堂

廃墟の愛玩食堂

18+ NSFW

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1章 / 全10

「いらっしゃいませ。今日は何かお探しですか」 薄暗い店内で、店主のしわがれた声が響いた。リナは勤務帰りのナース服のまま、ふらりと立ち寄った骨董屋の奥へと足を進める。棚に並ぶ奇妙な品々の中で、一枚の古びた羊皮紙と、黒いビニール袋に包まれた何かが目を引いた。 「これ、いくらですか」 リナが指差すと、店主は意味深に微笑んだ。 「ああ、その地図とおまけの品ですか。五百円でどうです。ただし……持ち主を選びますよ」 「かまいません」 と彼女は即答し、財布から硬貨を取り出した。店主は何も言わず、商品を渡した。アパートに戻ったリナは、買ったばかりの品を調べた。古地図には見知らぬ場所が記され、赤い丸で印がついている。座標らしき数字と、廃墟のマーク。そして袋の中身は、予想通りローターだった。 「なんでこんなものを買ったのかしら」 自分でも理由が分からない。でも、手に取った瞬間、胸の奥が熱くなったのを覚えている。休日、リナは衝動に従い、地図の場所へ向かった。バスを乗り継ぎ、山道を歩くこと一時間。目の前に廃墟と化した病院が現れた。錆びた鉄柵、割れたガラス、蔦に覆われた壁。 「これ、本当に病院だったの」 彼女は柵を乗り越え、敷地内へ足を踏み入れた。その瞬間、濃密な霧が立ち込めた。 「え、何これ」 視界が白く染まる。霧は不気味なほど濃く、数メートル先も見えない。リナは慌てて引き返そうとしたが、足が動かない。 「待って、何これ、体が」 霧の中から何かが伸びてきた。ぬめりのある質感の触手。それが彼女の足首に巻きつく。 「いやっ、放して」 叫び声は霧に吸い込まれた。さらに多くの触手が現れ、彼女の四肢を優しく拘束する。力は強いが、痛みはない。 「あなた、誰……私は、誰」 頭の中が靄がかかったように曖昧になる。自分の名前も、なぜここに来たのかも思い出せない。ただ、目の前に広がる霧と、体を包む柔らかな感触だけが現実だった。 「リナ……」 どこからか、優しい声が聞こえた。 「安心して。君はここで、新しい暮らしを始めるの」 霧が晴れると、そこには巨大な姿があった。けれど恐怖は不思議と湧かない。触手は彼女を抱きかかえるようにして、廃墟の建物の中へと運んでいった。

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