エラベノベル堂

偽恋人は夜を走り抜く

18+ NSFW

小説ID: cmo9ynq5z00yu01p5dywmwbpe

7章 / 全10

男たちが一斉に俺に襲いかかってくる。俺はリナを背に庇い、最初の男の腕を掴んで投げ飛ばした。タクシー運転手として喧嘩慣れしているわけじゃない——だが、この街で生き残る術は身についている。 「カイトさん!」 リナの悲鳴が響く。二人目の男が俺の腹を蹴り上げ、俺は床に崩れ落ちた。 「無駄な抵抗だ」 マネージャーが冷ややかに見下ろす。 「商品に傷をつけるな。男は処理しろ」 男たちが俺を取り囲む——その時、天井のスピーカーから大音量のアラートが鳴り響いた。 「警察だ!建物は包囲した!全員、手を挙げて投降しろ!」 警察が乗り込んできたのだ。男たちが動揺し、マネージャーが舌打ちをする。 「……チッ、引くぞ」 男たちは迅速に撤退を始めた。俺はリナを抱き起こし、サジ刑事の方へ向かった。 「サジさん、ありがとうございます」 「勘違いするな。別件の不正送金事件を追ってここに来たんだ。君たちが巻き込まれたのは偶然だ」 サジ刑事は鋭い目つきで言った。 「だが——問題がある。あいつらを逮捕するには、オークションの実況映像が必要だ。参加者全員の顔と、取引の証拠がなければ、立証できない」 俺は唇を噛んだ。 「じゃあ、逃がすしかないのか?」 「……本来はな」 サジ刑事は悔しげに拳を握った。 「だが、あのマネージャー——リナさんを諦めないだろう。商品として五千万の値がついてるんだ」 リナが震える声で言った。 「……私、どうすればいいの?」 俺は彼女の肩を強く抱いた。 「逃げない。戦うよ」 「え?」 「俺はこの街の運転手だ。裏道も、抜け道も、全部知ってる——それに、あの会場の設備も見た」 俺の中で、無謀だが唯一の策が芽生えていた。 「サジさん、時間を稼げますか?俺が証拠を作る」 「……何をする気だ?」 「オークションを——全世界に配信するんです」 サジ刑事は驚いたように俺を見た。そして、ふっと笑った。 「……狂ってるな。だが、やるしかない」 俺はリナの手を握った。 「リナ、信じてくれるか?」 彼女は潤んだ瞳で俺を見つめ、強く頷いた。 「カイトさんについていく。どこまでも」 夜の街が俺たちを待っている——最後の賭けが、始まろうとしていた。

7章 / 全10

TOPへ