エラベノベル堂

偽恋人は夜を走り抜く

18+ NSFW

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9章 / 全10

俺たちは裏口から再び会場へと侵入した。警備体制は手入れの影響で緩んでいる——サジ刑事の工作が効いているようだ。 「配電盤は二階の機械室……そこから音響システムへのアクセスができるはず」 俺は小声でリナに伝えた。彼女は頷き、ドレスの胸元に小型カメラを忍ばせる。 「配信準備、できてる。いつでもいける」 彼女の瞳にはもう怯えはない——覚悟と決意が宿っている。俺たちは非常階段を駆け上がり、機械室へと向かった。廊下の角を曲がると、一人の黒服が立っていた。 「おい、何をしている!」 男が駆け寄ってくる。俺は咄嗟に彼の懐に飛び込み、腹部に膝を叩き込んだ。男が呻きながら崩れ落ちる。 「……ごめん、慣れてないんだ」 俺は男を物陰に引きずり込み、機械室のドアを開けた。むっとする熱気と共に、無数のケーブルが張り巡らされた空間が現れる。 「これか……」 俺はメインコンソールを見つけ、配線図を頭に浮かべる。タクシー運転手として培った街の知識——通信インフラ、放送設備、その全てが今、役に立つ。 「リナ、カメラの映像をこの端末に転送できるか?」 「うん、やる」 彼女は素早くスマホを操作し、ケーブルを接続した。スクリーンに映像が表示される——会場の様子、参加者たちの顔、そしてオークションの実況。全てが克明に記録されている。 「よし、今だ」 俺はメインスイッチに指をかけた。 「世界中に垂れ流すぞ」 ——その時、背後でドアが開いた。 「見つけたぞ、ねずみども」 マネージャーが三人の男を連れて立っていた。拳銃の銃口が俺たちに向けられる。 「残念だったな。警察が来る前に、ここを片付ける」 俺はリナを背に庇った。 「……間に合わなかったか」 「カイトさん……」 彼女の震える声。マネージャーが冷ややかに笑う。 「お前たちの計画は筒抜けだ。サジ刑事——彼、身内だよ。組織の一員だ」 俺は戦慄した。警察の中に裏切り者が—— 「だが、お前たちの証拠映像——無駄にはならない」 マネージャーが銃を構える。 「大人しく渡せば、痛い目には遭わせない」 「……渡すわけないだろ」 俺はスイッチに指をかけたまま、マネージャーを睨みつける。 「お前たちの罪は——世界中が知ることになる」 マネージャーの顔が歪む。 「撃て!」 銃声——俺は咄嗟にリナを突き飛ばし、スイッチを押し込んだ。激痛が肩を貫く。だが、モニターが激しく明滅し、映像が切り替わる——会場の巨大スクリーンに、オークションの実況が映し出された。 「配信開始!」 リナの叫び声が響く。マネージャーが絶叫した。 「止めろ!止めるんだ!」 だが、もう遅い——世界中のサーバーに、証拠映像が拡散されていく。俺は肩を押さえながら、崩れ落ちるマネージャーを見下ろした。 「……終わりだ」 リナが俺に駆け寄り、涙を流しながら俺の頬に手を添えた。 「カイトさん……!」 俺は彼女を強く抱きしめた。 「守るって、約束しただろ」 彼女の唇が俺の唇に重なる——熱く、甘く、本物の口づけだった。

9章 / 全10

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