エラベノベル堂

謝罪ごっこ

18+ NSFW

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1章 / 全10

カイトはモニターに向かい、キーボードを叩く指を止めた。画面の中で、銀髪のウィッグを揺らす少女がカメラに向かって微笑んでいる。人気コスプレイヤー・リナ。最新のアニメキャラを完璧に再現した衣装と、華奢な肢体。再生数は軽く十万を超えていた。 「これが、例の依頼か」 メールボックスには簡潔な依頼文があった。動画編集の仕事だ。カイトは映像編集者として、いくつものクリエイターの作品を手掛けてきた。だが、今回の依頼人には見覚えがあった。三年前、ネット上の誹謗中傷に晒されていた少女。彼女を匿名で助けたのは、ほかでもない自分だ。リナはそのことを知らない。 「……まあ、仕事は仕事だ」 カイトは素材ファイルを開く。フォルダの中には、何時間分もの映像データが並んでいた。彼は編集ソフトにファイルを読み込み、タイムラインに並べる。リナの姿が、連続して表示された。 「えっと、ここは……カットで」 リナの声がスピーカーから流れる。撮影時の声だ。カイトは眉をひそめた。メイクの厚化粧の裏に隠れた疲労。無理に作った笑顔。長時間の撮影で張り詰めた神経。彼女は、傷ついている。今もなお。モニター越しに伝わる痛みに、カイトは無意識にため息を漏らした。 「……無理すんなよ」 彼は独り言を呟く。三年前、彼女を助けた時もそうだった。匿名掲示板で誹謗中傷の嵐に晒されていた少女。カイトは管理者に通報し、問題のスレッドを削除させた。それきりだった。名乗るつもりもなかったし、彼女が自分を覚えているとも思っていない。 「あの、編集をお願いしたいんですけど……」 リナからのチャット通知が画面右下に現れる。カイトは指先をキーボードに走らせた。 「引き受ける。素材を送ってくれ」 簡潔な返信。余計な言葉はいらない。カイトはそう決めていた。彼女との距離を縮めすぎない。でも、決して遠すぎもしない。 「ありがとうございます!助かります」 リナからの返信には、いくつもの絵文字が並んでいた。カイトは小さく鼻を鳴らす。無防備すぎる。ネットの闇を知らないわけではないはずなのに。 「……守る価値はある」 彼は再びモニターに向き直る。映像の中のリナが、屈託なく笑っていた。その笑顔の裏にある痛みを、カイトだけが知っている。深夜のチャットルームで泣き崩れていた少女。その姿が、今の華やかなコスプレイヤーと重なる。彼は静かに編集作業を開始した。自分にできるのは、彼女の輝きをより際立たせること。そして、影に潜む闇から彼女を守ることだ。カイトは決意を胸に、キーボードを叩き続けた。

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