エラベノベル堂

魔法が消える夜

18+ NSFW

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第1章 / 全10章

夜の十一時を回っていた。編集室のモニターが青白い光を放ち、チハヤは目をこすった。納期明後日のドキュメンタリー映像。素材を確認しているうちに時間を忘れていた。 「あー、終わらねえ」 椅子を押し出して立ち上がる。コンビニに行こう。缶コーヒーでも買って、頭を冷やす必要があった。ビルの裏口から出て、いつもの路地をショートカットする。古びたビルの立ち並ぶこの界隈、夜は人通りが途絶える。ゴミ箱の陰に、何かがうずくまっているのに気づいたのは、その時だった。 「……人?」 近づいて、息を呑んだ。少女だった。ふわりと広がるスカート、胸元のリボン、見たこともないデザインの衣装。まるでアニメのコスプレだ。ただしその服は汚れ、あちこちが切り裂かれている。白い太ももが露わになり、そこにも擦り傷が走っていた。 「おい、大丈夫か」 肩に手を触れる。熱い。顔を覗き込んで、チハヤは心臓が跳ねるのを感じた。透き通るような肌、潤んだ瞳。そして、その瞳に浮かぶ必死な光。 「……逃げて」 声はかすれていた。 「敵が……来る」 「敵? 何の話だ」 少女は震える指で、路地の奥を指さした。暗闇。その奥に、何かがうごめいている。 「私は……魔法少女。ミキ。魔力が……もう、ない」 魔法少女。現実的な思考をしているチハヤでも、その言葉の響きに異常な重みを感じた。少女の身体が淡く発光し、それが明滅しながら消えかけている。まるで寿命を迎えようとする蛍のようだった。 「嘘だろ」 「本当……。あなたの世界を守ってるの。私たちが……ずっと」 路地の奥から、不気味な笑い声が響いた。 「見つけたぞ、魔法少女」 現れたのは、人影。いや、人ではない。歪んだ輪郭、不自然に長い四肢。映画のVFXで見たような、しかし現実にはありえない存在。 「ミキ、お前の魔力は底をついたな。我々の組織が把握している」 少女——ミキは、チハヤの腕を掴んだ。細い指が、必死に食い込む。 「お願い……逃げて。巻き込みたくない…」 「待てよ、お前一人でどうするんだ」 「守るの……みんなを。私の役目だから……だから——」 言葉は続かなかった。敵の影が、地面からにじみ出るように伸びたのだ。ミキが悲鳴を上げる。チハヤは体が動く前に、状況を理解していた。これは、尋常ではない。そして、目の前の少女は、本気で助けを求めている。

第1章 / 全10章

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