エラベノベル堂

祖父の書斎で見つけた秘密

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10章 / 全10

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遥華は箱を机の隅へ戻し、閉めたふたの上にそっと手を置いた。笑いの余韻がまだ喉の奥に残っている。祖父があれほど真面目な顔で、若い頃から失敗を重ねていたと思うと、胸の奥がくすぐったくなるようだった。 書斎は、もうただの遺品の部屋ではなかった。紙の匂いも、背表紙の並びも、机の傷さえも、祖父がひとりで考え、迷い、こだわった時間の跡に見える。遥華は本棚の前に立ち、少しだけ考えたあと、分けてあった箱のうち一つを押し戻した。家族にこの秘密を明かすつもりはなかった。話してしまえば、たぶん誰かが困った顔をする。祖父の不器用な楽しみを、からかい半分で扱われるのは嫌だった。 それに、ここはもう自分の場所にしてしまってもいい気がした。遺品整理のために入ったはずの書斎は、いつのまにか、ひとりで本と向き合うのにちょうどいい静けさを持っていた。遥華は机の上の埃を指先で払う。光の角度が変わり、窓辺の影が少し伸びていた。 湯気の立たない紅茶がカップの中で薄く揺れる。さっき入れたまま、飲むタイミングを逃していたのだ。遥華はそれを片手に持ち直し、祖父の棚から一冊を引き抜いた。表紙は落ち着いていて、題字も妙に端正で、内容を知っている今となっては余計に可笑しい。けれど、開く前に一度だけ深呼吸をしたのは、なぜだか祖父に似た気がしたからだった。 真面目な顔のまま頁を開いた遥華は、次の瞬間、紅茶を吹きかけた。慌てて口元を押さえ、机にぽたぽたと落ちた雫を見下ろす。あまりに意外で、あまりに祖父譲りで、思わず自分でも肩を震わせた。静かな書斎に、小さな咳き込みと堪えきれない笑いが混じる。遥華は濡れた頁を急いで押さえながら、赤くなった頬のまま、もう一度だけ本を見つめた。

検閲済みプロット

黒髪のポニーテールの女子高生・遥華は、お嬢様育ちで男子との接点が少ないまま本を通して世界を広げてきた。亡くなった祖父の書斎で、彼が遺した大人向け文学の蔵書を見つけ、厳格な祖父の意外な一面に驚きつつも、作品を読み進める中で自分の感性や価値観の変化に気づいていく。最後は家族の秘密をユーモラスに受け止め、前向きな成長につながる物語。

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