エラベノベル堂

風が変えた夜

18+ NSFW

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5章 / 全10

数日後、岳は早朝から店内の模様替えに取り掛かっていた。 「入口の扉、少し位置を変えるだけで風の入り方が変わるはずだ」 結花は眠そうな目をこすりながら店に入ってきた。 「岳くん、そんな大掛かりなこと……」 「大丈夫、元に戻せる範囲だ。それに、アウトドアでテント設営するときも風向きは命運を分ける」 岳は汗を拭いながら微笑んだ。結花は彼の腕まくりした姿を見て、鼓動が速くなるのを感じた。二人で協力してテーブルを動かし、窓際に席を作る。午後の日差しが差し込む場所だ。 「ここが特等席になる。暖かさを売りにするなら、一番日当たりのいい場所を活かさないと」 結花は頷き、厨房へ向かった。 「じゃあ、新メニュー試してみるね」 彼女が用意したのは、生姜とネギをたっぷり使った鍋風スープ。寒い日には体が温まる。 「味見して」 岳がスプーンで一口飲む。濃厚な旨味と、生姜のピリッとした刺激が口いっぱいに広がった。 「うまい。これならいける」 結花の表情が明るくなる。 「でしょ?お母さんのレシピをアレンジしたんだ」 その瞬間、岳は真剣な眼差しで彼女を見つめた。 「結花、お前ってすごいな」 「えっ」 「ずっとこの店を守ろうとしてきた。両親の味を大切にして。それがお前の強さだ」 結花の頬が熱くなる。 「そんな……岳くんこそ、私のために時間を使ってくれて」 「当たり前だろ」 岳は窓の外を見ながら、ポツリと言った。 「お前が笑ってくれるなら、それが俺にとって一番大事なことだから」 その言葉に、結花は息を呑んだ。幼馴染の彼が、これほど率直に想いを口にするとは思わなかった。 「岳くん……」 夕暮れの光が店内を橙色に染める。二人の影が床に重なり合った。 「私、頑張るよ。この店、絶対守ってみせる」 結花の瞳に涙が光る。それは悲しみの涙ではなく、決意と、溢れ出る想いの涙だった。岳は彼女の頭を優しく撫でた。 「ああ、一緒にな」 新メニューの湯気が、二人を包み込んでいた。

5章 / 全10

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