エラベノベル堂

画面の向こうの君

18+ NSFW

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1章 / 全10

モニターの向こうで、彼女は完璧な笑顔を浮かべていた。浩はヘッドセットの音量を微調整しながら、配信画面の隅に映るチャット欄を監視する。今日のゲストは凛乃。夜の街で働く大人の女性として、その名を知らない者はいない。 「浩さん、音量ちょっと下げてくれる? 声が弾んじゃってるかも」 控室から凛乃の声が聞こえる。プロだ。配信開始前の緊張を微塵も感じさせない。浩は素早くフェーダーを操作し、親指を立てて合図を送った。凛乃は小さく頷き、カメラに向かって笑顔を作る。その瞬間、浩は見てしまった。彼女の瞳の奥にある、張り詰めたガラスのような脆さを。配信は順調に進んだ。凛乃は視聴者のコメントに丁寧に応え、時には自虐的なジョークで場を盛り上げる。浩は彼女の機転に感心しながら、陰から支え続けた。 「お疲れ様でした」 配信終了後、凛乃がスタジオに入ってきた。タイトな黒のドレスが彼女の曲線を際立たせている。だが、仕事モードの笑顔は消えていた。 「浩さん、今日はありがとう。助かったわ」 彼女はソファに座り込み、スマートフォンを取り出す。その指先が微かに震えていることに、浩は気づいた。 「……また、このアカウント」 凛乃の視線が画面に釘付けになっている。浩は意図せず、彼女のスマホを覗き込んでしまった。SNSのタイムラインには、匿名アカウントからの誹謗中傷が溢れている。『夜の蝶風情が』『金で男に買われるような女が』『そのうち痛い目見るよ』。凛乃は唇を噛みしめ、画面を暗くした。 「ごめんなさい、見苦しいところを」 彼女は立ち上がろうとするが、その足取りは重い。浩は彼女の腕を掴んだ。 「凛乃さん、これ、警察に届けてるんですか?」 「届けても、特定まで時間がかかるって。……それに、これくらい日常茶飯事だから」 浩は彼女の瞳を見つめた。そこには、仕事のプロとしての強がりとは裏腹に、傷ついた少女のような光が宿っていた。浩は決意を胸に告げた。 「俺に協力させてください。犯人、特定しましょう」 凛乃は驚いたように目を見開き、やがて小さく微笑んだ。 「……ありがとう、浩さん」 その微笑みは、配信で見せるどの笑顔よりも、ずっと本物に見えた。

1章 / 全10

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