エラベノベル堂

規律が溶ける

18+ NSFW

小説ID: cmonit20t0hgk01oc9lvki5h3

2章 / 全10

「ここ、狭くない?」 文化祭準備の当日、割り当てられたのは体育館の隅に用意された小さな部屋。 「落とし物相談所」 と手書きされた看板が、狭い空間をさらに圧迫している。 「仕方ないよ。場所足りなかったんだから」 蓮はのびをしながら、パイプ椅子にどさりと腰を下ろした。相談所といっても、机と椅子が二つ置かれただけのスペース。お互いの膝が触れそうな距離だ。 「ていうか、暑くない?ここ」 蓮がそう言うと、ブレザーの前ボタンを外し始めた。 「ちょっ、何してるの!」 葵は思わず声を上げた。 「だって暑いんだもん。葵ちゃんも脱げば?」 「私は脱がないわよ。あなたが勝手に脱がないで」 しかし蓮は聞く耳を持たず、ブレザーを脱ぎ捨てて椅子上にかけた。シャツのボタンも無造作に開いていく。 「蓮!」 「はいはい、これくらいで」 三つ目のボタンまで開いたシャツから、引き締まった胸板が覗く。薄い筋肉のラインが、葵の視線を釘付けにした。だらしない制服の下に、意外なほど鍛えられた体が隠されていたなんて。 「……何見てんの?」 「何でもない」 葵は慌てて視線を逸らしたが、狭い空間に蓮の存在感が迫ってくる。汗の匂い。男子の体温。逃げ場のない密室。息が詰まりそうだ。 「ねえ、葵ちゃん」 「何?」 「近くない?」 言われて気づく。いつの間にか、蓮の方へ身を乗り出していた。彼の膝と葵の膝が、触れ合っている。 「……逃げ場がないのよ」 「そっか。俺も逃げられないね」 蓮が笑った。無邪気な笑顔なのに、葵の心臓が跳ねた。この狭い空間で、二人きり。外の喧騒が遠い。誰も入ってこない。そんな状況が、葵の中で何かを暴き始めていた。 「落とし物、来ないね」 「……まだ始まったばかりだし」 「退屈だね」 蓮は机に足を乗せ、さらにリラックスした姿勢をとる。開いたシャツの隙間から、滑らかな肌が見える。汗が鎖骨を伝い、シャツに染み込んでいく。葵は無意識に息を止めていた。 「葵ちゃん、顔赤いよ」 「暑いからよ」 「嘘。俺の体見て赤くなってるんでしょ」 「……バカじゃないの」 心臓がうるさい。こんな狭い場所、聞こえてしまうかもしれない。蓮の体温が、まるで自分のもののように感じる。逃げられない。逃げたくない。相反する感情が、葵の中で渦巻いていた。

2章 / 全10

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