エラベノベル堂

規律が溶ける

18+ NSFW

小説ID: cmonit20t0hgk01oc9lvki5h3

3章 / 全10

「落とし物、届いてたよ」 蓮の手には、淡いピンクのハンカチが握られていた。女子生徒が慌てて駆け寄り、恥ずかしそうに受け取る。 「ありがとうございます……あの、どうやって私のってわかったんですか?」 「刺繍のイニシャル。あと、匂いでわかった」 「えっ、匂い?」 「柔軟剤の香り。山下さんだろ」 「すごい……ありがとうございます!」 女子生徒が顔を赤らめながら去っていく。葵は蓮の横顔を見つめていた。あの眠そうな目で、そんな細かいことを観察しているなんて。 「何?俺の顔に何かついてる?」 「……意外と鋭いのね」 「バカにされてる?」 「違う。感心してるのよ」 蓮の手が、机の上で無造作に動く。長い手指。綺麗な関節のライン。窓から差し込む光が、その手を照らしていた。無防備なのに、どこか色っぽい。 「葵ちゃん、俺の手が好き?」 「好きじゃないわよ。見てただけ」 「嘘。じっと見てた。俺のこと、意識してるんでしょ」 蓮が突然、身を乗り出した。狭いパーティションの中で、彼の顔が急接近する。 「俺さ、葵ちゃんのこと、ずっと見てるんだよね」 「……何が言いたいの」 「毎朝、校門で注意してくれるでしょ。あれ、楽しみにしてる」 耳元で囁かれた声が、背筋を震わせた。低く、甘い響き。密室の湿った空気が、二人の間を行き交う。 「俺、葵ちゃんの匂い、覚えたよ」 「やめて……変なこと言わないで」 「柔軟剤じゃなくて、葵ちゃん自身の匂い。甘いよ」 心臓が早鐘を打つ。蓮の唇が、耳にかかるかかからないかの距離。吐息が肌に触れる熱さ。 「蓮……近いってば」 「ごめん。でも、逃げられないでしょ?ここ」 「……逃げたくないのかも」 言ってから、葵は自分の言葉に驚いた。何を言っているの。 「じゃあ、このままでいい?」 「……バカ」 でも、拒否しなかった。蓮の体温が、狭い空間を満たしていく。汗の匂いと、何か甘いような香り。葵の理性が、少しずつ溶けていった。 「ねえ、葵ちゃん」 「……何」 「ここから出たくないなぁ」 蓮の言葉に、葵は言葉を返せなかった。密室の湿った空気。二人の呼吸だけが響く空間で、葵は彼の無防備な仕草に翻弄され続けていた。

3章 / 全10

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