エラベノベル堂

控えめ後輩の仮面

全年齢

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10章 / 全10

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仕事を終えたころには、総務課の蛍光灯が一段と白く感じられた。机の上はきれいに片づき、差し替えた書類も封筒に収まっている。残っているのは、帰る準備だけだった。一真が上着を手に取ると、少し遅れて結衣も鞄を閉じた。 お疲れさまでした いつもの控えめな声だった。だが、朝から続いた緊張が解けたせいか、その響きはどこか柔らかい。一真もお疲れ、と返して席を立つ。廊下に出ると、日中のざわつきが嘘みたいに静かだった。窓の外では、薄い夕焼けがビルの隙間に沈みかけている。 二人でエレベーターを待つ間、結衣は何も言わなかった。けれど、いつものように軽口で間を埋める気配もない。その沈黙が妙に心地よくて、一真は逆に落ち着かなかった。横に立つ彼女の気配だけが、やけに近い。案件を乗り切った安堵なのか、それとも別の何かなのか、自分でもうまく整理できないまま、表示ランプの数字を見ていた。 やがて、扉が開く。乗り込もうとした一真の袖が、ふいにそっと引かれた。 先輩 振り向くより早く、結衣が一歩だけ近づく。息が触れそうな距離で、彼女はいつもの調子を少しだけ外したまま、一真の耳元へ言葉を落とした。 明日から、ちゃんと私のこと、見逃さないでください 囁きは、仕事の話にも冗談にも聞こえた。なのに、そのどちらでもない気配があった。一真は思わず動きを止める。問い返そうとした時には、結衣はもう何事もなかった顔で一歩下がっていた。 エレベーターの扉が静かに閉まる。結衣の言葉の意味は、まだ掴みきれない。けれど、その曖昧さごと胸に残って、妙に消えなかった。一真は閉じた扉を見つめたまま、肩の力が抜けていくのを感じる。 たぶん、これからは今までと少し違う。仕事の流れの中にも、ふとした沈黙の中にも、彼女はまた何かを仕掛けてくるのだろう。だがそれはもう、振り回されるだけのものではなかった。 背後で、結衣の小さな笑い声がかすかに響いた気がした。振り返る前に、扉の向こうへ消えていく足音だけが遠ざかる。新しい日常は、思ったよりあっさりした顔で、もう始まっていた。

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おとなしい会社の後輩OLが転んだ際に、普段は見せない大胆なインナー姿を偶然知ってしまった。開き直った後輩との新たな日常が始まるコメディ。会社で後輩から意外な一言を耳打ちされた時点で終わる。

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