金曜の午後、オフィスは週末を前にした浮ついた空気に包まれていた。拓也はデスクで翌週の予定を確認しながら、ふと顔を上げた。美羽が廊下を歩いている。いつもの地味なカーディガンに黒いスカート、腕には書類の束。一見すれば何の変哲もない大人しい後輩の姿だ。拓也と目が合うと、彼女は小さく会釈した。それだけ。何も起こらない。ここ一ヶ月、二人はオフィスの死角、ホテル、非常階段、あらゆる場所で体を重ねてきた。しかしそれを知っているのは二人だけ。周囲の同僚たちは、美羽が相変わらず大人しい後輩だと信じている。拓也は視線を戻し、キーボードを打ち始めた。美羽が近づいてくる足音が聞こえる。すれ違いざま、彼女が立ち止まった。 「拓也さん」 小声で名前を呼ばれ、拓也が顔を上げると、美羽が耳元に唇を寄せてきた。 「今夜、拓也さんの部屋に行ってもいいですか?」 一見すれば仕事の相談のように見える距離感。しかし彼女の吐息が耳朶を濡らす。 「……ああ」 と拓也が短く答えると、美羽は微かに笑った。 「それと、話したいことがあります。大事な話」 彼女はそのまま歩き去った。拓也は胸の奥で不安が疼くのを感じた。退勤後、拓也の部屋。美羽はソファに腰を下ろし、ワイングラスを手にしていた。いつものようにスカートを捲り上げ、ガーターベルトを晒すこともなく、ただ静かにグラスを傾けている。 「拓也さん、私たちの関係、ずっと続けてくれますか?」 唐突な問いに、拓也は戸惑った。 「……それは、もちろん」 「よかった」 美羽が顔を上げ、まっすぐに拓也を見つめた。 「実はね、私、ずっと隠してたことがあるんです」 彼女はグラスを置き、立ち上がった。 「拓也さんが私のこと、大人しい子だと思ってたのは知ってます。でも、それ以上に知ってほしいことがある」 美羽はスカートのポケットから小さな箱を取り出した。 「開けてみて」 拓也が箱を開けると、中には一本の鍵が入っていた。 「これは……」 「拓也さんの部屋の合鍵です。私、こっそり作ったんです」 美羽が悪戯っぽく笑う。 「いつでも拓也さんが会いに来られるように」 拓也は息を呑んだ。 「美羽……」 「それと、もう一つ」 彼女が拓也の目の前に立つ。 「私ね、実は……」 美羽が拓也の首に腕を回し、耳元で囁いた。 「……前の彼氏、三人いました。みんな、私から逃げていったんです。拓也さんは逃げないですよね?」 その言葉に拓也は背筋が凍るのを感じた。 「私、執着しちゃうタイプなんです。一度手に入れたものは、絶対に離さない」 美羽の指が拓也の胸をゆっくりと撫でる。 「だから、拓也さんは私だけのものです。ずっと、ずっと」 彼女の瞳には暗い光が宿っていた。しかしその瞬間、美羽の表情が一変した。 「……冗談ですよ」 彼女はクスクスと笑った。 「怖がらせちゃいました? でも、合鍵は本当です。あと、これも」 美羽はカバンから一枚の紙を取り出した。 「引っ越しの申し込み書です。拓也さんのマンションの、同じ階の空き部屋にします」 拓也は言葉を失った。 「そうすれば、いつでも会えますよね」 美羽が拓也の首に腕を回し、唇を寄せた。 「これからも、よろしくお願いしますね。拓也さん」 その甘い声に、拓也は逃げられない運命を悟った。美羽の笑顔は天使のようで、その実、悪魔の囁きだったのだ。
検閲済みプロット
おとなしそうな会社の後輩OL、美羽が転んだ拍子にガーターベルト姿を偶然見られてしまう。恥じらうどころか開き直った彼女は、拓也を積極的に誘惑し、オフィスでの情事や新しいプレイを楽しむ日々が始まる。最後は会社で彼女から意外な一言を耳打ちされ、物語が幕を閉じるコメディタッチの官能小説。










