拓也は言葉を探そうとしたが、喉から音が出なかった。美羽は拾い集めた書類を胸に抱え、何事もなかったかのように立ち上がった。 「行きましょうか」 彼女は拓也の腕を軽く引き、再び歩き出す。いつもの大人しい後輩に戻ったかのように見える。しかし、その瞳の奥に宿る光は、先ほどまでの彼女とは明らかに違っていた。資料室に書類を置いた後、拓也は自分のデスクに戻ろうとした。すると美羽が近づいてきた。 「拓也さん、これ、部長に渡してきてもらえませんか? 四階の会議室にいるんです」 「ああ、いいよ」 書類を受け取ると、美羽が小さく笑った。 「エレベーター、一緒に行きましょう」 拓也は胸の奥で警戒音が鳴るのを感じながらも、断る理由も見つからず彼女と並んで歩き出した。廊下には誰もいない。午後の静けさが逆に不穏さを際立たせる。エレベーターホールに到着し、ボタンを押すと、すぐに到着の音が響いた。扉が開くと、中には誰もいなかった。二人で乗り込み、四階のボタンを押す。扉が閉まり始めた瞬間、張り詰めた空気が二人を包んだ。 「……拓也さん」 美羽が名前を呼んだ。拓也が振り返ると、彼女はすぐそばにいた。 「さっきの、見てたでしょ?」 「見てない、その……」 「嘘」 美羽は拓也の右手を取ると、自分のスカートの下へと導いた。拓也の手が白い太ももの肌に触れる。柔らかな感触に、拓也は息を止めた。 「触って。これ、本当なんだから」 指先が太ももの内側を滑ると、ガーターベルトの繊細なレースと、肌を食い込ませるベルトに触れた。美羽は小さく笑う。 「どきどきしてる? 拓也さん」 拓也は手を引こうとしたが、美羽の手がそれを許さなかった。 「私ね、こういうの止められないんです。誰にも言えない秘密……拓也さんも、共犯になってくれますよね?」 美羽の顔が近づいてくる。大人しい仮面は完全に剥がれ落ち、そこには淫らな笑みを浮かべる女がいた。拓也は背筋が震えるのを感じた。 「次はもっと……見せてあげてもいいですよ」 エレベーターが到着の音を立てた。美羽はすぐに距離を取ると、何事もなかったかのように微笑んだ。 「あ、着きましたね。ありがとうございます、拓也さん」
ヴェールの裏側
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