エラベノベル堂

彼女に喰われる

18+ NSFW

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1章 / 全10

放課後の通り雨があがったばかりの路地裏で、樹は足を止めた。湿ったアスファルトの匂いが漂う中、灰色の猫が濡れた体で眠っている。その前にかがみ込んでいる人影があった。学校一の不良として恐れられる葵咲だ。染め上げられた銀髪が薄暗がりで妖しく光り、改造制服からは危険な香りが漂う。彼女がここで何をしているのか。樹は息を潜めて様子を窺った。 「……なんでだよ」 吐き捨てるような声。だがその語尾は震えていた。猫に背を向けた葵咲の肩が小さく跳ねる。彼女は乱暴に袖で目元を拭った。 「泣いてるのか」 と樹は思わず呟いていた。葵咲が鋭い視線を向ける。 「見てたのか? ウザいんだけど」 「いや、その猫……」 「死んでたのよ。捨てられて」 彼女の声から刺々しさが消え、代わりに空虚な響きが滲む。 「弱い生き物は嫌いだ。でも、放っておけなくて」 涙を浮かべた瞳が濡れた猫を見つめる。その表情には、教室で見せる冷徹な仮面はない。樹は強く心を打たれた。この子は、動物が好きなんだ。不器用ながらも、命を慈しむ優しさを秘めている。 「あのさ、今度、猫カフェ行かない?」 考える前に言葉が口から出ていた。葵咲が目を見開く。 「は? なんで私がお前と」 「猫好きだろ? 癒やされると思うんだけど」 「……勘違いしないでよ」 彼女は顔を背けたが、拒絶の言葉は続かない。樹はその沈黙を肯定と受け取った。 「週末、迎えに行くから」

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