エラベノベル堂

赤タイツの秘密

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1章 / 全10

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「赤タイツ男が出るんだって」 夕方のファストフード店で、友人の一人が笑いながらそんな話をした。深夜の公園、ブランコの影、赤い脚だけが見えたらしい。冗談めいた口調なのに、なぜか妙に耳に残った。春川浩は、怖がりのくせにそういう話に弱い。帰り道、頭の中で何度もその言葉が跳ね返り、家に着いてからも、電気を消すたびに思い出してしまった。 眠れないまま時計を見ると、日付はもう変わっていた。浩は布団の中で何度も寝返りを打ち、結局、好奇心に押し負けた。確かめに行けば、ただの見間違いかもしれない。そう自分に言い聞かせ、上着を羽織って外へ出る。夜風は冷たく、街灯の輪の外は黒く沈んでいた。 公園に着くと、昼間の明るさが嘘みたいだった。遊具はみな静かで、ブランコだけが微かにきしむ。浩は足を止め、植え込みの陰から広場を見た。誰もいないはずなのに、奥の暗がりに、ぼうっと赤いものが揺れている気がした。 喉がひゅっと鳴る。逃げたい。今ならまだ引き返せる。だが足は動かなかった。浩は息を殺し、ブランコの鎖の向こうをじっと見つめる。赤い影は、木陰と夜の境目に溶けたり、少しだけ輪郭を見せたりしている。人の形に見える。そう思った瞬間、背筋を冷たいものが走った。 見間違いだ、と頭では分かっているのに、目は勝手に追ってしまう。怖いくせに、確かめたい。浩は一歩だけ前に出た。砂利が小さく鳴る。すると赤い影も、ほんのわずかにこちらへ向いた気がした。 浩は息を詰めたまま、もう一度目を凝らす。暗がりの中で揺れていた赤は、ただの布なのか、それとも本当に誰かの姿なのか。正体を確かめるために、浩は震える膝を叱りつけるようにして、ブランコの奥へ視線を伸ばした。

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