暗闇の奥にあった赤は、思っていたよりもずっと鮮やかだった。春川浩は、喉までせり上がった息を飲み込む。影はゆっくりと揺れ、次の瞬間、月明かりがその輪郭をなぞった。 人だった。 しかも、その顔に見覚えがある。学校で何度も見かけた、きっちりと髪をまとめ、授業では一度も崩れたところを見せない先輩。高瀬真理だった。 浩はしばらく瞬きを忘れた。赤タイツだと思っていたものは、派手な色の練習着らしい。真理はブランコのそばで、腕を肩の高さまで持ち上げ、ゆっくりと息を吐きながら身体をひねっていた。まるで見えない糸に引かれるみたいに、首を回し、足首を軽く弾ませ、静かな体操を続けている。 学校一まじめで成績優秀な先輩が、深夜の公園で、こんな格好で、こんな動きをしている。 浩の頭の中で、さっきまでの怪談が音を立てて崩れた。怖さは残っているのに、それ以上に、意味のわからなさが喉を塞ぐ。赤い影の正体が分かったのに、分かったという感覚がまるでなかった。 真理はまだ浩に気づいていないのか、静かに膝を曲げて伸ばし、肩を落としてからまた持ち上げた。その動きは妙に丁寧で、真面目さがそのまま形になったようだった。なのに、やっていることだけはあまりにも奇妙で、浩は立ち尽くしたまま、ただ見ていることしかできない。 ブランコは風もないのに、かすかに揺れていた。砂場の縁に落ちた街灯の光が、真理の赤い服の端を淡く照らす。浩はようやく、自分が探していたものが幽霊でも怪物でもなく、学校でいちばん近寄りがたいほど優等生な先輩だったのだと飲み込む。 そしてその事実が、怖いはずの夜を、別の意味でますますおかしなものに変えていった。
赤タイツの秘密
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