エラベノベル堂

灼熱研究室の雪女

18+ NSFW

小説ID: cmoyx0p2n000001o097g9504q

1章 / 全10

「暑い……死ぬほど暑い」 真夏の深夜二時、大学の研究室で信一はうめいた。窓から差し込む月光以外、光源はモニターの青白い明かりだけ。エアコンは三日前に故障したまま動かない。複数の実験機器が吐き出す排熱で、室内はサウナを超えて灼熱地獄と化していた。 「修理の連絡、明日また入れるか……」 彼はシャツの襟元を広げ、天井を仰ぐ。汗が額から滴り、顎を伝って床に落ちた。その時だった。 「……暑い」 誰かの声が、耳元で囁いた。信一は弾かれたように振り返る。誰もいない。研究室には彼一人だけだ。 「気のせいか」 濡れた手で顔を覆い、深呼吸する。また汗が一滴、床に落ちた。 「暑いなぁ……」 その瞬間、モニターに文字が浮かんだ。『ソウデスネ』 「!」 信一は椅子ごと後退する。誰もいない。キーボードにも触れていない。なのに画面には白い文字が浮かび続けている。 「だ、誰だ」 『……』文字は消え、代わりに首筋に冷たい息がかかった。まるで真冬の風のように。 「ひっ」 信一は総毛立った。この室温で、ありえない冷たさだ。 「暑い……と言ったな」 今度ははっきりと、女性の声が背後から聞こえた。信一は震えながら振り返る。薬品保管庫の扉が、音もなく開いていた。その奥から、白衣を纏った女が歩み出てくる。肌は透き通るほど白く、長い黒髪が濡れたように張り付いていた。 「君は……」 信一は言葉を失う。女は幽幽と歩み寄り、汗に輝く彼の首筋に指を這わせた。その指先は氷のように冷たい。 「涼しくしてあげましょうか」 女は妖艶に微笑んだ。だがその瞳には、底知れない闇が宿っていた。

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