エラベノベル堂

幼馴染の見栄恋

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2章 / 全10

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「次って言ったら、もっとすごいの出せるけど」 優真がわざとらしく親指を立てると、柚菜は待ってましたとばかりに目を細めた。 「いいよ。こっちも、まだ言ってないことあるし」 「へえ。たとえば?」 「たとえば、私の彼氏って、学校でも優しいの。誰にでもじゃなくて、ちゃんと私にだけ分かる優しさ」 言いながら、柚菜は自分でも少し首の後ろが熱くなるのを感じた。ふわっとした言い方で逃げたはずなのに、妙にそれっぽく聞こえてしまう。優真は一拍置いてから、負けまいと腕を組んだ。 「俺の彼女だって、そういうの得意だし。しかもさ、気遣いがさりげないんだよな。露骨じゃないのに、ちゃんと刺さるっていうか」 「刺さる、って何」 「そこは勢いだろ」 柚菜が吹き出すと、優真もつられて口元をゆるめた。だが、そのまま笑って終われるほど素直ではない。 「あと、メッセージも毎回ちゃんとしてるし」 「こっちもだよ。返事、早いし」 「早いだけじゃないから」 「それ、そっちにも言える」 同じような言い回しが、今度はほとんど同時に飛び出した。 「ちゃんとしてる」 「毎回」 「早い」 「すぐ返す」 一つずつ重ねるたび、二人とも表情を崩しきれなくなる。互いの言葉が鏡みたいに似てきて、しかもその鏡に映るものが、どちらも無理のある見栄だと見えてしまうからだ。 「……なんか、似てきたな」 「気のせいでしょ」 「いや、絶対似てる」 優真が言うと、柚菜はふっと視線をそらした。 「似てるんじゃなくて、優真が私に合わせてるんじゃない?」 「そっちこそ」 「じゃあ、どっちも必死ってこと」 言い切った瞬間、柚菜はしまったという顔をした。優真も同じ顔で固まり、それから同時に笑い出す。負けたくない気持ちが強すぎて、結局、話の型までそっくりになっている。 「まあ、うちの彼女は特別だから」 「こっちだって、彼氏が特別」 「はい出た」 「そっちもね」 優真はコインをもう一枚入れ、画面の光に顔を照らされた。柚菜もすぐに身を乗り出す。 「で、次は何で張り合う?」 「そっちが先に言いなよ」 「じゃあ、デートの話でもする?」 「いいね。うちの彼女、センスいいから」 「こっちも、彼氏のほうが上だし」 二人のやり取りは、もう見栄を張るための会話というより、見栄を張っていることを隠す気のない会話になっていた。なのに、どちらもやめない。ゲームの勝負より、口の勝負のほうがずっと熱くなっていることに、気づいているくせに。 画面の中でキャラクターが突っ込み合うたび、筐体の前の二人もまた、同じ調子で言い合う。 「私の彼氏、ほんと優しいから」 「俺の彼女も、相当だから」 ほとんど同じ言葉が重なって、二人は一瞬だけ黙った。次の瞬間、同時に肩を震わせる。 見栄は見栄のままなのに、妙に息が合ってしまう。そのことが、何よりおかしかった。

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