夕暮れのオレンジ色が、マンションの窓から斜めに差し込んでいた。玲奈が大学から帰宅してリビングに入ると、父の雅彦がソファに深く沈み込み、両手で顔を覆っている。 「パパ、どうしたの?」 声をかけると、雅彦はゆっくりと顔を上げた。その目は赤く腫れ、涙の跡が頬に残っていた。 「玲奈……ごめんなさい」 震える声で、雅彦は打ち明けた。会社が倒産したこと。借金が残っていること。そして、もう家計を支える余裕がないこと。 「これからどうなるの?」 玲奈は呆然と尋ねた。 「わからない……でも、君にも協力してほしいんだ。高収入の仕事を探してくれないか」 雅彦は娘の手を取り、懇願するように見つめた。 「パパのために、お願いだ」 玲奈は複雑な思いで父を見つめた。大学の学費も、生活費も、これからは自分で稼がなければならない。アルバイト経験はコンビイト程度。正社員になどなれるはずもない。そんな彼女の視線が、テーブルの上に置かれた求人誌に止まった。パラパラとページをめくると、ある広告が目に飛び込んできた。 「派遣型コンパニオン。高収入。未経験OK。即日勤務可能」 時給の欄を見て、玲奈は目を疑った。コンビイトの時給の、五倍以上の金額が記載されている。 「これなら、すぐに稼げるかも」 玲奈は小さな声でつぶやいた。雅彦は 「どんな仕事だ?」 と尋ねたが、彼女は 「接待の仕事だよ」 と曖昧に答えた。実際には詳細までは読み取れない。ただ、金額だけが彼女の目を引いた。 「やってみるよ。パパのためだから」 玲奈はそう告げると、広告に記載された電話番号をスマートフォンに入力した。呼び出し音が響く。心臓が早鐘を打つ。もし仮に、自分が想像している以上の何かが待っていたとしても、今の彼女には選ぶ余地などなかった。 「はい、〇〇プロダクションです」 電話に出た女性の明るい声に、玲奈は 「あの、求人を見たんですけど」 と緊張した声で答えた。雅彦が不安そうに見守る中、彼女は面接の日程を確認し、通話を終えた。 「明日の午後、面接してくれるって」 玲奈は父に微笑みかけた。 「大丈夫だよ、パパ。なんとかなるから」
秘密派遣
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