エラベノベル堂

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第2章 / 全10章

翌日の午後、玲奈は求人誌に載っていた住所のビルを訪れた。なぜか高校時代の制服を着てくるよう指示があり、きつくなったブレザーを着用してきた。駅から徒歩五分の場所にある雑居ビル。エレベーターで三階に上がると、 「〇〇プロダクション」 と書かれたドアが見えた。深呼吸をして、ノックをする。 「どうぞ」 中から低い男性の声が聞こえた。玲奈はドアを開け、中に入った。部屋は意外にも明るく、清潔感がある。革張りのソファとガラス張りのテーブル。その奥に、四十代くらいの男性が座っていた。太めの体格で、サングラスをかけている。 「君が電話してくれた子か?」 「はい。水野玲奈です」 玲奈は軽く頭を下げ、ソファに通された。 「座ってくれ。店長の田村だ」 田村と名乗った男は、玲奈の全身をじろじろと眺めた。視線が顔から首、胸、腰、足へと移動する。普通なら不快に感じるかもしれないが、玲奈は 「これも面接の一部なんだろう」 と何も思わなかった。むしろそのねっとりした視線に心地良さを感じていた。 「で、どうしてうちの求人に応募したんだ?」 「家計の足しにしたくて。高収入だって書いてあったから」 「ふん、正直だな」 田村はサングラスを外し、ニヤリと笑った。 「うちの仕事は、コンパニオンって書いてあったけど、具体的に何をするんですか?」 玲奈が首をかしげて尋ねると、田村は一瞬きょとんとした顔をした。 「知らずに来たのか?」 「はい。求人誌には『接待』って」 「まあ、間違っちゃいないがな」 田村はタバコを取り出し、火をつけた。 「お客さんの要望に合わせて、お話したり、お酒を出したり……あと、その他いろいろだ」 「その他?」 「まあ、現場で覚えろ。未経験OKって書いてあっただろ」 「はい。だから応募したんです」 玲奈の堂々とした返答に、田村は面白がるような表情を浮かべた。 「不快なことでも文句は言わない?」 「お仕事ですから」 その言葉に、田村は吹き出した。 「いいねえ、その根性。気に入ったよ」 田村は煙を吐き出しながら、玲奈の顔をもう一度見た。 「年齢は?」 「二十歳です」 「彼氏は?」 「いません」 「経験は?」 「えっと、彼氏は一人だけいました。半年くらい」 「どこまでやった?」 「デートとか、手を繋いだり……」 「それだけ?」 「キスもしました」 玲奈は顔を少し赤らめた。田村はサングラスをかけ直し、ニヤニヤと笑った。 「純情だねえ。いいね、そういうのは売れるよ」 「売れるって、人気ってことですか?」 「そう。お客さんはね、初々しい子が好きなんだよ」 田村はタバコを灰皿に押し付け、立ち上がった。 「よし、採用。今日から働けるか?」 「え、今日から?」 「早いほうがいいだろ? 稼ぎたいんだろ?」 「……はい」 玲奈は少しためらったが、 「パパのためだ」 と自分に言い聞かせて頷いた。 「じゃあ、契約書にサインしてくれ」 田村は書類を差し出した。玲奈は目を通したが、法律用語が多く、よくわからない。それでも、署名欄に名前を書いた。 「これで完了だ。あ、そうだ」 田村はデスクの電話が鳴っていることに気づいた。受話器を取ると、短く二言三言話し、電話を切った。 「ラッキーだな。早速、指名が入ったよ」 「もう?」 「新人さんを好むお客さんがいるんだよ。行ってこい」 田村はメモを渡した。 「シティホテルの〇〇号室。一時間後に行ってくれ」 玲奈はメモを受け取り、立ち上がった。 「あの、制服とか必要ですか?」 「私服でいい。中は……まあ、適当に」 田村はまたニヤリと笑った。玲奈はその意味がよくわからなかったが、 「これも仕事だ」 と自分に言い聞かせて部屋を出た。廊下を歩きながら、彼女の胸の鼓動が早くなっていくのを感じた。

第2章 / 全10章

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