エラベノベル堂

地下のトモダチ

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10章 / 全10

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屋敷の騒ぎは、夜が深まるほどに輪郭を失っていった。だが遥奈の胸の中では、むしろ今まで見えなかったものがはっきりしていた。ユウセイに導かれて抜けた細い扉の先で、彼女はようやく気づいたのだ。家を食い荒らしていたのは、同じ屋敷に身を置く者たちだけではない。外から入り込み、没落を利用しようとした者がいた。 ユウセイはその気配を知っていたように、彼女の前を離れずに歩いた。遥奈は古い帳面に記された言葉と、親族たちの不自然な争い、失われた品や続いた事故を一つずつ結び直す。誰が何を狙い、どの隙を突いたのか。曖昧だった点が、ひとつの形へ収まっていくと、不思議なほど胸の震えは静まった。 証拠は、隠されていたものの中にあった。誰かが手を伸ばし、屋敷の弱りきった姿をさらに利用しようとしていた痕跡。遥奈がそれを差し出すと、沈んでいた家中の空気が少しずつ変わった。疑い合っていた親族たちの顔にも、ようやく言葉にならない理解が浮かぶ。すべてが一息で解けたわけではない。それでも、屋敷は自らを食うための争いから、やっと目を覚まし始めた。 その夜、遥奈は久しぶりに自室の灯りを落ち着いて見つめた。ユウセイは傍らで静かに身を揺らし、以前よりずっと大きくなった体を、なお彼女へ寄せてくる。守られるだけの存在ではなく、彼は最後まで彼女を押し出し、前へ進ませたのだ。 やがて遥奈は、ユウセイを連れて地下へ下りた。石壁の奥にある泉は、昔と変わらずひっそりと息をしている。水面は薄く灯りを返し、長く失われていた落ち着きを湛えていた。遥奈はそこで足を止め、手の中のぬくもりを確かめる。 「帰るのね」 答えの代わりに、ユウセイはやわらかく身を寄せた。別れは確かに近いのに、痛みだけではなかった。遥奈はそっと泉へ彼を戻す。冷たい水に触れたはずなのに、指先にはまだ温度が残っていた。彼女はしばらくその余韻を抱いたまま、静かな水音を聞いている。 もう、あの屋敷は終わりではない。失われかけた家は、ようやく立て直しの一歩を踏み出した。遥奈は小さく息を吸い、泉の底で揺れる影へ目を細める。見えなくなっても、絆が消えたわけではない。 彼女は最後に一度だけ、静かな水面へ微笑んだ。そこから先は、きっと新しい日々が始まる。

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舞台は中世ヨーロッパ。没落をたどる貴族の娘が、屋敷の地下で小瓶に入った不思議な小さな軟体生物を見つける。内緒で部屋に持ち帰り、家族に隠しながら世話を始める。餌は受け付けないが、やさしく接すると少しずつ大きく育つようだ。やがて子犬ほどの大きさになると、強い愛着を示して布団に潜り込むようになり、少女は戸惑いながらも絆を深めていく。次第にその存在は屋敷の危機を察知して少女を守るようになり、最後は彼女を救うハートフルな物語。

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