数日後の夕暮れ、悠人の自室には緊張感が漂っていた。いつもならスマホをいじりながら気だるげな態度の悠人が、今日に限って椅子に正座して美琴を待っている。 「今日は結果が出る日っすね、美琴姉さん」 その声に、美琴の胸がわずかに痛んだ。あの時の勢いで約束してしまったことを、後悔し始めていたのだ。 「そうね……頑張った?」 美琴は参考書を机に置きながら、できるだけ平静を装った。 「まあ、見てくださいよ」 悠人は鞄から一枚の紙を取り出し、机の上に広げた。そこには鮮やかな赤ペンで、驚くべき数字が記されていた。 「これ……」 美琴は目を疑った。偏差値が前回より二十近くも上がっている。しかも数学は満点に近い。 「本当なの?」 「不正なんてしませんよ。美琴姉さんの教え方が良かったんす」 悠人はすっと目を細めて笑った。 「だから、約束っすよね」 美琴の喉がごくりと鳴った。忘れていたわけではない。だが、まさかここまで成績を上げるとは予想していなかった。 「ええ、約束は守るわよ。で、何がいいの?お小遣い?それともゲーム?」 美琴は努めて明るく言ったが、悠人の瞳には悪戯っぽい光が宿っていた。 「そんな子供っぽいものじゃないっす」 悠人はゆっくりと立ち上がり、美琴に近づいた。 「覚えてますよね、なんでもいいって言ったこと」 「もちろんだけど……」 美琴が後ずさりしようとした時、悠人の口から信じられない言葉が飛び出した。 「美琴姉さんの学生時代の制服とスクール水着を着てほしいんす」 室内に重い沈黙が落ちた。美琴の顔が瞬時に赤く染まる。 「えっ、ちょっと待って……そんなの……」 「ダメっすか?約束破るんすか?」 悠人は無邪気な顔で首を傾げたが、その目には逃さないという強い意志があった。美琴は言葉を失った。大人の女性として、まさか後輩にそんな姿を見せることになるとは。 「返事は次回でいいっすから」 悠人の声が、どこか遠くで響いているようだった。
願いは旧制服
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